近年食物アレルギー発症における経皮感作経路の重要性が指摘されている。本研究は、食物アレルゲンによる経皮感作のメカニズム等の解析、及び指標となるマーカー分子の探索を目的として実施した。 本研究で用いた経皮感作実験系の概要は次のとおりである。①マウス背部を剃毛し、皮膚テスト用パッチを用いて食物アレルゲンタンパク質を貼付(3日間/週×4週)。②感作過程で部分採血し、抗原特異的IgE抗体等の産生を確認。③感作終了後、抗原を腹腔内投与してアナフィラキシー反応を惹起し、Th2型免疫応答(Ⅰ型アレルギー)が誘導されたことを確認。 平成27-29年度は、まず各種サイトカイン類について検討したが、血中濃度及び抗原貼付した皮膚でのmRNA発現量に関して、対照群と比較して有意に変化するものは認められなかった。次に抗体産生の場である所属リンパ節(腋窩リンパ節)に関する解析を行ったところ、感作群では対照群と比較してリンパ節が肥大しており、B細胞の数や割合が有意に増加し、IgE産生B細胞の割合も増大していること、IL-4産生ヘルパーT細胞や濾胞性ヘルパーT細胞(Tfh)が増加していること、CD207(Langerin)陽性樹状細胞が有意に増加していること等を明らかにした。 30年度は、各種抗原間での比較検討を行った。その結果、小麦グルテン加水分解物及びセリシン(シルクアレルゲン)では、オボアルブミン及びオボムコイド(卵アレルゲン)やβ-ラクトグロブリン(牛乳アレルゲン)等と比較して、IgE産生誘導能が高いことが示され、また腋窩リンパ節にけるIgE産生B 細胞数やTfhの割合、IL-4あるいはIL-10産生ヘルパーT cellの割合がより高くなる傾向が見られた。 本研究により、経皮感作について、皮膚樹状細胞や所属リンパ節細胞の免疫応答の概要やマーカー分子の候補を示すことができた。
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