研究課題/領域番号 |
15K08062
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研究機関 | 国立医薬品食品衛生研究所 |
研究代表者 |
近藤 一成 国立医薬品食品衛生研究所, 生化学部, 第二室長 (40270623)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 脳症 / 細胞死 / AIF / きのこ |
研究実績の概要 |
本研究はきのこによる脳症発生原因究明の研究で、これまでに apoptosis-inducing factor (AIF)が関与していることを示してきた。さらに、脳症とこの分子の分子メカニズムを明らかにする。ミトコンドリアに局在して酸化的リン酸化に関与する一方、細胞核に移行して細胞死を誘導するという相反する機能を有するこの分子の役割を完全に解明するために、ゲノム編集で改変することを検討した。まず、AIF第三エキソン中の2つのロイシンをアラニンに置換すると同時に、ピューロマイシン遺伝子を第二イントロンに導入するためのドナーベクターを4種類構築した。次に、目的導入箇所のDNA切断用TALENを4種類設計して、in vitroアッセイから高い切断活性を持つもの1つを得た。 ドナーベクターおよびTALENを細胞に導入して、目的の相同組換えが起きた細胞群をPCRで確認しながら行ったが、目的の置換体は得られなかった。AIFの転写が弱くTALENのゲノムへのアクセスが充分でないことが原因と判った。条件を再検討して再実験を行うとともに、内在性AIFをそのままでミトコンドリア局在AIFをプラスミド導入で構築するための検討を行った。今後、望みのミトコンドリア局在AIF変異体を確立したら、核内およびミトコンドリア内での機能解析を行う
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
内在性細胞死制御分子AIFのゲノム改変が、AIF自体の転写が弱い遺伝子でヘテロクロマチン様になってゲノム編集ツールTALENなどのアクセスが充分でないことから、改変に必要な最初のDNA2本鎖切断が誘導が難しい問題に直面したため。そこで、これを解決するために、これまでの手法の他に、別の方法、内在性AIFはそのままに、AIF変異体を新たにゲノムに導入した後に内在性をノックアウトする方法を検討し始めた
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今後の研究の推進方策 |
従来の方法と、AIF変異体を導入した後に内在性を欠失させるという、異なる2種類の方法でミトコンドリア局在AIFの構築を行っている。内在性AIFを改変した変異体を樹立できた場合は、これを用いて、これまでの研究で得られたきのこ急性脳症の原因候補物質やエトポシドなどの細胞死刺激物質で処理した時の影響を、核、および、ミトコンドリア機能解析にて行う。内在性AIFにAIF変異体を新たにゲノムに挿入したものを樹立できた場合は、その後に内在性AIFをCRISPR/Cas9で欠失させる必要がある。その上で、様々な刺激物質に対する効果を核、および、ミトコンドリアで詳細に検討する。特に、近年AIFには従来考えられていた細胞死誘導能力はないか、低いとの報告が複数あることから、この点を明らかにする。そして、脳症原因物質の作用機構を解明する。さらに、最終年度においては、動物実験によりそのメカニズムを確認し、その結果がヒトに当てはまるものであるかどうかの検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度実施する実験において、最初の変異細胞株樹立が遅れているため、その後の実験の進行が行うことが初年度内において実現できなかったため。また、本実験部分にかかる試薬類は、当初から研究室内にあるものを使用したため、新たに必要な試薬類が少なかった。
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次年度使用額の使用計画 |
2年目においては、変異細胞株樹立を、複数の方法で樹立検討できるよう体制を見直して検討しているため、2年目前半にはそこは解決可能であると考えることから、樹立した細胞株を用いて、細胞死制御分子の機能解析と急性脳症発生原因との因果関係解明を行う。
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