研究実績の概要 |
H29年度は,ヒト肝細胞株の薬物代謝機能(CYP3A4活性)をBhas42細胞形質転換試験法(Bhsa42 CTA)のプロモーション試験における被験物質処理期間である10日間で維持可能であり,かつBhas42細胞のフォーカス形成に対する影響を最小限にできる培養条件を検討した。その結果,ヒト肝細胞株のCYP3A4活性を10日間培養後でも検出可能なレベルに保つことができる改変Bhas42 CTA培地を作成した。さらに,被験物質非処理条件下,この改変CTA培地を用いたBhas42細胞の単独培養では,改変培地への変更に起因するBhas42細胞のフォーカス形成数の有意な増加は見られなかった。 Bhas42細胞の薬物代謝機能に関する研究では,イニシエーション試験における3-methylcholanthreneによるBhas42細胞のフォーカス形成に対するCYP活性阻害剤の影響を検討した。その結果,Bhas42細胞で発現が確認されたCYP1A1,1A2および2B6のうち,主にCYP1A1およびCYP1A2が3-methylcholanthreneによるBhas42細胞のフォーカス形成に寄与をすることが分かった。 ヒト肝細胞株との共培養系を用いたBhas42 CTAの開発には,Bhas42細胞に対し低毒性かつフォーカス形成への影響が少ない,さらにヒト肝細胞株の代謝機能を10日間維持できる培地が必要であり,これらの条件を満たす培地の探索が研究の律速となってきた。本年度の研究により,それらの条件に近づく改変Bhas42 CTA培地を作成できた。今後,この改変培地について,実験結果の再現性,さらにBhas42細胞とヒト肝細胞株の共培養下における両細胞での相互影響を検討することにより生体内代謝を考慮したBhas42細胞形質転換試験法の確立が期待できる。
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