研究実績の概要 |
我々は植物成長ホルモンであるIndole acetic acidをリード化合物とした41個の新規合成インドール化合物をスクリーニングして細胞内ATPを増加させるMA-5を見いだし、MA-5がミトコンドリア病の患者細胞で細胞の生存率を濃度依存性に改善することを(Suzuki T. TJEM 2015)、さらに多数の患者より提供された皮膚線維芽培細胞の検討で Leigh脳症10例、MELAS 6例、Leber病 2例と複数患者の細胞で同様の治療効果を確認した(Matushasi T. EBioMedicine 2017)。 MA-5の作用機序の検討から、ミトコンドリア内膜・外膜の蛋白質と結合して内膜クリスタ構造と機能維持を担うミトコンドリア内膜蛋白室Mitofilinと結合することが明らかとなった(Suzuki T. JASN 2016)。さらにMA-5がmitofilinに結合してATP合成酵素のF1 FO ATP synthaseのオリゴマー化が促進して、ATP合成活性が上昇することと、形態と機能が密接に連関するミトコンドリアの患者細胞による形態異常(fragmentation, dynamicsの低下)をMA-5が改善することを報告した(Matsuhashi T, EBioMedicine 2017)。動物モデルでは、Karns-Sayer 症候群の変異mitDNA(4696bp deletion) をもつミトコンドリア病モデルマウス(Mitomice)にMA-5を投与すると心臓と腎臓のミトコンドリア呼吸鎖ComplexIVの機能低下が改善して短命なモデルマウスの寿命が延長し、マウス虚血再灌流モデル、シスプラチン腎症モデルとMA-5は腎組織病理と腎機能の有意な改善効果を示している(Suzuki T. JASN 2016)。
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