研究課題/領域番号 |
15K08066
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
山本 康次郎 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70174787)
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研究分担者 |
荒木 拓也 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (00568248)
坡下 真大 名古屋市立大学, 薬学研究科(研究院), 講師 (20613384)
永野 大輔 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90738387)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 薬物輸送担体 / 細胞内薬物濃度 / PK-PD解析 |
研究実績の概要 |
抗HIV薬であるダルナビルおよびリトナビルを対象としてLC-MS/MSによる超微量定量法を確立し、血中および血球細胞中濃度測定が可能となった。ダルナビルおよびリトナビルを併用しているHIV感染症患者の血中および血球中濃度を測定したところ、リトナビルの濃度は個々の患者で大きくばらつくものの、ダルナビルの細胞中濃度のばらつきは小さく、リトナビルの併用によりダルナビルの細胞内取り込みが何らかの制御を受けていることが示唆された。 MOLT4細胞を用いたin vitro細胞内取り込み試験の結果、ダルナビルの細胞内取り込みがリトナビルにより影響を受けることが示されているが、定量的な関係が明らかでなく、薬物の細胞輸送機構を同定するには至っていない。 MRI造影剤であるガドキセト酸の定量法を確立して薬物動態検討したところ、ガドキセト酸の異性体間で動態が異なることが明らかとなり、肝細胞取り込みに関与する輸送担体の基質特異性に差があることが見いだされた。したがって、投与薬剤の異性体比はもちろんのこと、薬物輸送担体の遺伝子型や発現量、薬物間相互作用により撮像効率が影響を受けることが考えられ、薬物の細胞内移行が治療に大きく影響する可能性が認められている。今後、in vivoにおける撮像効率を動物実験により検討することにより、薬物輸送担体の機能や、それに伴う細胞内薬物濃度が与える影響に関する詳細な検討を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
抗HIV薬であるダルナビルおよびリトナビルのLC-MS/MSによる超微量定量法を確立し、血中および血球細胞中濃度測定が可能となった。ダルナビルの細胞内取り込みがリトナビルにより影響を受けることが示されているが、定量的な関係が明らかでなく、薬物の細胞輸送機構を同定するには至っていないものの、in vitro試験による細胞輸送機構の検討に技術的な困難はなく、研究は概ね順調に推移している。 ガドキセト酸の異性体間で細胞輸送特性が異なることから、撮像効率に輸送体特性が影響することが考えられ、in vivoにおける撮像効率とin vitro試験による輸送機構解明が結びつく可能性が高まり、研究は順調に推移しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
抗HIV薬であるダルナビルとリトナビルの細胞内/血中濃度比は、通常の薬物輸送担体制御では説明できない可能性が高まっている。HIV感染患者は非常に複雑な薬物療法を受けており、多剤による薬物間相互作用が影響している可能性がある。今後、測定対象薬物を加えてそれぞれの薬物の影響を明らかにしていく必要がある。一方で、in vitro試験により主要な役割を果たす輸送担体を同定したり、輸送効率に影響を及ぼす因子を明らかにすることにより、in vivoにおける大きなバラツキを説明できる可能性があるので、引き続き詳細な検討を行っていく。
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