研究課題/領域番号 |
15K08067
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
小林 カオル 千葉大学, 大学院薬学研究院, 准教授 (30255864)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | CYP3A / テストステロン / ノックアウトマウス / 前立腺 |
研究実績の概要 |
Cytochrome P450 3A(CYP3A)は薬物などの外来異物だけでなく、内因性物質の代謝にも関与する。しかし、ヒトin vivoにおけるCYP3Aの生理機能、および医薬品がCYP3A酵素の活性上昇あるいは活性低下を介して生理機能へ及ぼす影響は明らかにされていない。本研究の目的は、ヒトCYP3Aがコレステロールの恒常性維持および前立腺アンドロゲン作用の制御に果たす役割を解明し、ヒトCYP3Aの活性変化による生理機能への影響を明らかにすることである。申請者らは、すでにCyp3a-KOマウスでは野生型マウスに比較してコレステロール生合成が亢進していることを報告し、平成27年度には、ヒトCYP3A遺伝子クラスターを導入しCYP3A誘導剤を投与したマウスではヒトCYP3Aの発現増加にともない、25位水酸化コレステロールの生成亢進とコレステロール合成酵素の発現低下を引き起こすこと明らかとした。平成28年度は、前立腺アンドロゲン作用におけるCYP3Aの役割を明らかにするため、Cyp3a-KOマウスを用いて、肝におけるテストステロン代謝(不活化)、生体内テストステロン濃度および前立腺におけるアンドロゲン応答遺伝子の発現がCyp3a欠損により変化するかを検討した。CYP3A-KOマウスの肝ミクロソームにおけるテストステロン6β水酸化活性は野生型マウスの1/4と低いのに対し、血漿中遊離型テストスロン濃度は9倍と高く、肝および前立腺内総テストステロン濃度も2倍以上高い値を示した。さらに、前立腺におけるアンドロゲン応答遺伝子の発現量もCYP3A-KOマウスが野生型マウスより高い値を示した。これらの結果より、CYP3Aは肝においてテストステロンを不活化することにより、生体内テストステロン濃度を制御し、前立腺におけるアンドロゲン作用の恒常性維持に関与していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画の下記4項目のうち、1)-3)の3項目について期待する結果を得た。4)については、期待する結果ではなかったが、導入したCYP3Aの発現レベルが低いことが原因であると考えられた。 1)CYP3A欠損によるテストステロン代謝への影響、2)CYP3A欠損による生体内テストステロン濃度への影響、3)CYP3A欠損による前立腺アンドロゲン作用への影響、4)ヒトCYP3A導入による生体内テストスロン濃度および前立腺アンドロゲン作用への影響
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度の研究はほぼ計画通り進行したため、平成29年度は、以下のとおり、計画どおりにCYP3A欠損による前立腺アンドロゲン作用増強メカニズムの解明とヒトCYP3Aの活性変化によるコレステロール代謝およびアンドロゲン作用への影響に関する検討を実施する。1)Cyp3a欠損によるアンドロゲン応答遺伝子の発現増加メカニズムの解析:Cyp3a-KOおよび野生型マウスの前立腺組織を用い、抗アンドロゲン受容体抗体によるクロマチン免疫沈降を行う。2)Cyp3a欠損による前立腺におけるSrd5a2遺伝子発現量への影響:Cyp3a-KOおよび野生型マウスの前立腺組織におけるSrd5a2遺伝子のmRNA発現量を測定する。3)Cyp3a欠損によるSrd5a2遺伝子の発現増加メカニズムの解析:前立腺におけるSREBP-2の標的遺伝子の発現量を測定する。Cyp3a-KOおよび野生型マウスの前立腺組織を用い、抗SREBP-2抗体によるクロマチン免疫沈降を行い、Srd5a2遺伝子へのSREBP-2の結合量を比較する。4)CYP3Aの活性変化によるコレステロール代謝および生合成への影響:Cyp3a-KO、野生型およびCYP3Aヒト化マウスにCYP3A阻害剤および誘導剤を投与し、コレステロール濃度および合成酵素発現量を測定する。5)CYP3Aの活性変化によるテストステロン代謝および前立腺アンドロゲン作用への影響: 4)の試料を用い、テストステロン代謝活性、血中および組織中テストステロン濃度、前立腺におけるアンドロゲン応答遺伝子の発現量を解析する。6)CYP3Aの機能変化による生化学検査値への影響: 4)の試料を用い、生化学検査値を測定する。
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