Cytochrome P450 3A(CYP3A)は薬物などの外来異物だけでなく、内因性物質の代謝にも関与する。しかし、ヒトin vivoにおけるCYP3Aの生理機能、および医薬品がCYP3A酵素の活性上昇あるいは活性低下を介して生理機能へ及ぼす影響は明らかにされていない。本研究の目的は、ヒトCYP3Aがコレステロールの恒常性維持および前立腺アンドロゲン作用の制御に果たす役割を解明し、ヒトCYP3Aの活性変化による生理機能への影響を明らかにすることである。申請者らは、すでにCyp3a-KOマウスでは野生型マウスに比較してコレステロール生合成が亢進していることを報告し、平成27年度には、ヒトCYP3A遺伝子クラスターを導入しCYP3A誘導剤を投与したマウスではヒトCYP3Aの発現増加にともない、25位水酸化コレステロールの生成亢進とコレステロール合成酵素の発現低下を引き起こすこと明らかとした。平成28年度は、CYP3A-KOマウスでは野生型マウスに比較して肝におけるテストステロン不活化が低下し、生体内テストステロン濃度が高い値を示すことを明らかにした。さらに、前立腺におけるアンドロゲン応答遺伝子の発現量がCYP3A-KOマウスでは野生型マウスより高い値を示すことも明らかにした。平成29年度はCYP3A-KOマウスでは野生型マウスに比較して、前立腺においてアンドロゲン応答遺伝子へのアンドロゲン受容体結合が亢進していることを明らかとした。さらに、テストステロンをジヒドロテストステロンへ活性化するSRD5A2の発現量がCYP3A-KOマウスでは高いことから、CYP3A-KOマウスではテストステロンの不活化が低下することに加え、活性化も亢進していることが示唆された。
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