研究課題/領域番号 |
15K08068
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
東 恭平 千葉大学, 薬学研究科(研究院), 助教 (10463829)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 脳梗塞 / アクロレイン / ヘパラナーゼ / MMP9 / 酸化ストレス / 脳虚血 |
研究実績の概要 |
1.脳梗塞誘導24時間後の梗塞巣では、グリコサミノグリカン (GAG)の発現量が著しく減少するため、そのメカニズムを脳梗塞モデルマウスを用いて解析した。血漿中ヘパラン硫酸 (HS)濃度を調べたところ、梗塞誘導3~24時間後で増加した。一方、コンドロイチン硫酸 (CS)濃度は梗塞誘導3時間後ではほとんど変化が認められず、24時間後に増加した。以上の結果より、脳毛細血管で梗塞が起きると血管内皮細胞のHSが速やかに分解し、血中へ放出されることが示唆された。脳梗塞誘導24時間後では、梗塞巣においてヘパラン硫酸分解酵素であるヘパラナーゼ (HPSE)およびHSプロテオグリカンを切断するマトリックスメタロプロテアーゼ9 (MMP-9)の発現量が著しく増加していた。
2.血管内皮細胞にはHSを主成分とする糖衣が存在し、単球の接着を妨げる役割を担っている。脳梗塞巣では、毒性の強い不飽和アルデヒドであるアクロレイン (ACR)や活性酸素種が発生するため、ヒト不死化脳毛細血管内皮細胞にACR、H2O2および虚血/再灌流処理を施した時のGAG発現量を調べた。酸化ストレス条件下では、CS発現量はほとんど変化しなかったのに対し、HS発現量はACR添加時に著しい減少が認められた。この結果は転写レベルでのHPSE誘導に基づいており、MMPの関与は認められなかった。現在、HPSE阻害剤によるHS保護効果を検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
脳梗塞急性期においてHS分解に関与する主要な因子としてHPSEを同定したことから、研究実施計画は順調に進展していると考えられる。しかしながら、モデルマウスで観察されたMMPsの発現増加やCSの分解が、不死化脳毛細血管内皮細胞を用いた検討では再現できなかったことから検討の余地がある。
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今後の研究の推進方策 |
脳梗塞モデルマウスおよび不死化内皮細胞を用いてHPSE阻害剤の有効性を検討する。 ヒト脳毛細血管は内皮細胞の他、アストロサイトおよびペリサイトから構成されている。梗塞巣におけるMMPの発現増加およびCS分解機構を明らかにすべく、不死化アストロサイトおよび不死化ペリサイトを培養して検討する。
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