研究課題
1.梗塞部位においてコンドロイチン硫酸 (CS)が分解を受けているかどうかを中大脳動脈血栓モデルマウス (脳梗塞モデルマウス)を用いて検討した。その結果、梗塞誘導24時間後では、梗塞部位のCS発現量が健常部位に比べて著しく減少していた。また、血漿中CS濃度を注意深く測定したところ、梗塞誘導3時間後からCS濃度が増加し、24時間後まで増加が認められた。梗塞部位におけるCS発現量の減少にヒアルロニダーゼ(Hyal)1、Hyal2およびHyal4が関与しているかどうかを調べた。その結果、梗塞部位におけるHyal4の著しい発現量増加がタンパク質レベルおよびmRNAレベルで認められた。2.不死化脳血管内皮細胞において、CSとHyal4の発現量に対するアクロレイン (ACR)、H2O2および低酸素処理の効果を調べた。その結果、酸化ストレス処理はCSの発現量に影響を及ぼさなかった。内皮細胞においてHyal4の発現が認められたが、酸化処理を施してもHyal4の発現量は変化しなかった。以上の結果より、梗塞部位におけるHyal4の発現亢進は、内皮細胞以外の脳血管細胞が関与していることが示唆された。3.脳梗塞モデルマウスに脳保護薬としてN-アセチルシステイン (NAC)、HPSE阻害剤として低分子ヘパリン(クレキサン)を同時投与したところ、NAC単独投与では梗塞体積が約35%減小したのに対し、NACとクレキサンの同時投与では約56%と更に減小と相加効果が認められた。
2: おおむね順調に進展している
脳梗塞急性期においてHSとCS分解に関与する主要な因子としてHPSEおよびHyal4を同定したことから、研究実施計画は順調に進展していると考えられる。しかしながら、脳毛細血管を構成する内皮細胞、ぺリサイトおよびアストロサイトのうち、どの細胞が酸化ストレス時にHPSEとHyal4を産生するのか検討の余地がある。
今年度は、脳梗塞急性期におけるHyal4の発現機構を重点的に調べ、CSの分解が炎症拡大の原因であるマクロファージの浸潤に対していかに重要であるかを分子レベルで解明する。具体的には、脳毛細血管不死化細胞 (ぺリサイト、アストロサイト)に酸化ストレスを負荷した際にHyal4の発現増加に伴うCSの分解が観察されるかどうかを検討する。更に、梗塞モデルマウスに酸化ストレス除去剤としてN-アセチルシステイン、HPSE阻害剤として低分子ヘパリンおよびHyal4阻害剤として低分子コンドロイチン硫酸を同時投与した時の梗塞巣の大きさを調べる。
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