研究課題/領域番号 |
15K08073
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
黒崎 勇二 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (90161786)
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研究期間 (年度) |
2015-10-21 – 2018-03-31
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キーワード | 局所適用型DDS / 微小透析 / 局所薬物動態 / 固体分散体 / デコンボリューション |
研究実績の概要 |
局所適用型Drug Delivery System (DDS)医薬品の開発評価では、局所あるいは全身における薬効予測(薬効保証)のためにも非結合形薬物の局所および全身循環系での薬物動態を統合したモデルによる評価系の構築が科学基盤として不可欠である。 本研究は、薬物の局所投与から全身循環に至る過程の数理的理解とその能動的制御法の開発について製剤学的な基礎的知見を得ることを目的として、非結合形薬物の局所モニタ法として有用と考えられる微小透析法(microdialysis, MD)法の局所動態特性の評価への応用に関する薬物投与局所から全身循環に至る過程の数理的理解とその能動的制御についての知見を得ることを目的とし、局所適用型DDS医薬品の薬物作用の限局性および局所利用率/全身利用率の科学的な設計・評価法の基盤構築を目指す。併せて、経皮適用型DDS医薬品の創出に際し問題となる薬物の皮膚透過特性を改善する製剤組成物の創製を目指し、局所適用型DDS医薬品の製剤設計への応用について検討を図るものである。 吸着動態補正MD法による透析追随性補正について、MD法による薬物動態モニタに際して問題となるMDプローブのoutlet tubingへの薬物吸着に由来するモニタプロファイルの「時間遅れ」を数理的に適切に補正する手法として、あらかじめMDプローブごとに取得したモニタ薬物の吸着動態のモデル関数化を試みた。アウトレットチューブ吸着モデルとして、well-stirredモデルとtubeモデルに基づくモデルを比較し、両者には差異がないことから数理計算特性に優れるwell-stirredモデルに基づくアウトレットチューブ吸着モデルを採用することとした。 皮膚透過特性を改善した製剤組成物の調製として、難水溶性のモデル薬物に対し、製剤学的に易溶性複合体化や水溶性高分子との固体分散体化などを試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
年度後半に入ってからの採択であったため、平成27年度(初年度)の研究の立ち上げが遅くなった。 (1)MDプローブのoutlet tubingへの薬物吸着に由来するモニタプロファイルの「時間遅れ」を数理的に適切に補正する手法として、まず、アウトレットチューブへの吸着動態の数理モデル化を試み、逐次計算法によるパラメータの取得に成功した。得られた吸着動態モデルにより実測モニタプロファイルをデコンボリューションする「吸着動態補正MD法」に向けての第一段階を終えた。 (2)種々の方法で難水溶性のモデル薬物の製剤組成物の調製を試み、非晶質性の複合体(固体分散体を含む)の調製とそれらの物理化学的手法(X線回折、示差走査熱量分析)による製剤学的特性の評価ができた。 (3)含水ゲルシートの調製に向け、高分子溶液の粘度測定の準備を終えた。
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今後の研究の推進方策 |
年度後半に入ってからの採択であったため、平成27年度(初年度)の研究の立ち上げが遅くなったが、27年度の成果をもとに、次年度以降の研究計画についても若干見直し、研究を推進する。 数理計算特性に優れるwell-stirredモデルに基づくアウトレットチューブ吸着モデルで記述した吸着動態関数を用いて実測試料のモニタ値をデコンボリューションする「吸着動態補正MD法」を考案し、透析特性の異なる数種のモデル薬物に応用し、モニタプロファイルの「時間遅れ」を数理的に適切に補正する手法としての有用性と適用性について検討を進める。 物理化学的手法(X線回折、示差走査熱量分析)により製剤学的特性を評価できた難水溶性のモデル薬物の非晶質性の複合体(固体分散体を含む)について、水溶性化度の改善およびラット摘出皮膚の透過性を評価し、皮膚透過特性を改善した製剤組成物の調製を試みる。 薬物の皮膚透過性を改善する製剤学的手段である、適用薬剤の被覆化剤(ドレッシング材)として、含水ゲルシートの調製および製剤学的特性の評価を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度後半に入ってからの採択であったため、平成27年度(初年度)の研究の立ち上げが遅くなったため。
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次年度使用額の使用計画 |
研究を推進するために、薬物の皮膚透過性を評価するためのラット皮膚として、剃毛処理が不要でありアーティファクトの少ない市販品の摘出皮膚を購入し、使用する。
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