研究課題
薬剤性の肺線維症は極めて重篤な障害であるが、その発症機構には不明な点が多く、予防法・治療法も確立されていない。近年、肺胞上皮Ⅱ型細胞の筋線維芽細胞への転換(上皮間葉転換;EMT)が肺線維化の一因として注目されている。本研究では、肺胞上皮細胞を用い、薬剤によるEMT 誘発の分子機構を解明することを第一の目的とする。次に、EMT を抑制しうる化合物を探索・同定し、薬剤性肺障害の予防法・治療法を開発することを第二の目的とする。平成29年度の成果は以下の通りである。1)薬剤誘発性EMTを抑制しうる化合物の探索を行った結果、抗酸化剤であるascorbic acidと植物ポリフェノールであるquercetinは、TGF-β1、bleomycin、methotrexateによる細胞の形態変化、アクチンフィラメントのリモデリングおよびα-smooth muscle actinのmRNAやタンパク質発現の増加を顕著に抑制したことから、薬剤性EMTを幅広く抑制し得る有望な化合物である可能性が示唆された。2)TGF-β1および両薬剤による細胞内のROS産生増加は、quercetinにより有意に抑制された。また、bleomycin処置によりsmad2のリン酸化の亢進が認められ、そのリン酸化の亢進はquercetinにより有意に抑制された。また期間全体では、本研究によって当研究室で樹立したRLE/ABCA3細胞は薬剤誘発性のEMTをin vitroで評価する上で、優れたモデルであり、BLMのEMT誘発機構の一部にTGF-β1が関与する可能性が示唆された。さらに、肺胞上皮細胞においてquercetinはTGF-β1および薬剤誘発性のEMTを抑制しうる有用な化合物であり、その抑制効果にはROS産生増加の抑制やTGF-β/smad経路の阻害が関与している可能性が示唆された。
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