肝細胞を用いた胆汁酸への異化代謝を促進する物質の探索 昨年度まで用いていたヒト肝がん由来HepG2細胞では、7α-ヒドロキシコレステロール(7α-OHC)を経て、コール酸(CA)が産生される胆汁酸合成のメインルートである古典経路についての評価が行えなかった。これは、HepG2細胞が通常の肝細胞に比べCAの産生が遅く、産生量が少ないためであると考えられた。そのため、CAが産生される肝細胞を探索したところ、ヒト肝腫瘍HepaRG細胞がCAを産生する可能性が認められた。そこで、HepaRG細胞にコレステロールあるいは7α-OHCを添加培養したところ、CAの産生が確認できたため、古典経路に対して再評価を行ったところ、次のような結果を得た。 評価した物質は、ポリフェノール、胆汁酸促進薬、生薬由来成分、胆汁酸促進作用が報告されているアミノ酸、コレステロールの構造に類似している食品中の成分の計19種類について検討を行った。この中で、CA濃度の減少が認められたものもあるが、シアニジン、ゲニピン、プロブコール、スェルチアマリン、β-シトステロール、カンペステロールおよびスティグマステロールにおいて、CA濃度が増加し、コレステロール代謝の促進物質としての可能性が示唆された。また、これらの物質についてCAの抱合体であるグリココール酸(GCA)およびタウロコール酸(TCA)も測定したが、大きな変化は認められなかった。さらに、CAの前駆体である7α-OHCについても検討したところ、ゲニピン、カンペステロールについては大きな変化が認められなかったが、シアニジン、β-シトステロールにおいては、7α-OHCが減少し、スティグマステロールは、増加が認められた。しかしながら、促進部位の推定には更なる検討が必要である。
|