目的: 染色体の形成、構造を維持する分子であるコンデンシンを構成する分子の1つ、SMC4が大腸がんにおいて発現が低い場合には予後不良であることを我々は報告した。本研究ではSMC4の機能を明らかにするため、CRISPR/Cas9ベクターを利用した遺伝子編集によりノックアウト細胞および発現亢進細胞の作製と、SMC4に関与するマイクロRNAの機能解析を行った。 方法及び結果: CRISPR/Cas9ベクター(System Biosciences)に、DNA2.0およびCRISPRdirectを利用して設計したgRNAを挿入し、リポフェクション法によりトランスフェクションしたが、形質転換は認められなかった。そこでCRISPR-Cas9ノックアウトプラスミドおよびHDRプラスミド(サンタクルズバイオテクノロジー)を、また、Activation プラスミドをリポフェクション法によりトランスフェクションした。Puromycinにより選別後、限界希釈法により100個程度の単一コロニーを作成したが、Cas9、GFPのマーカーは蛍光顕微鏡、ウエスタンブロッテイング法で確認できなかった。さらにレンチウイルスベクター(SIGMA)をPolybrene存在下、HeLa、HEK293に感染させ、Puromycinによる細胞選別を行った。この方法ではPuromycinによる効果的な選別が行われ、ベクターが導入されたと考えられた。しかしながら、ゲノム編集によるDNAへの変異導入によるミスマッチが確認できず、GFPの発現も確認できなかった。そこで導入されたマーカー遺伝子をPCRで確認したところ、Puromycin耐性遺伝子は導入されていたが、cas9、GFP遺伝子は導入されておらず、レンチウイルスベクターのPuromycin耐性遺伝子のみが導入されていた。これらの結果からSMC4 gRNAを含むCRISPR/Cas9の導入は困難と判断し、siRNAを導入する実験ではSMC4のmRNA発現は0.03±0.01、0.12±0.02(平均値±標準誤差、それぞれHeLa、HEK293細胞)まで低下することを確認できた。
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