研究課題/領域番号 |
15K08092
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
崔 吉道 金沢大学, 大学病院, 教授 (40262589)
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研究分担者 |
嶋田 努 金沢大学, 大学病院, 准教授 (90409384)
菅 幸生 金沢大学, 薬学系, 助教 (00467101)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 肥満 / 薬物体内動態 / 薬物代謝酵素 / トランスポーター / 経皮吸収 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、肥満時の体内動態変動による医薬品副作用の回避戦略を確立することにある。合成オピオイドのフェンタニルは、呼吸抑制等の重篤な副作用リスクを勘案しつつ、いかに早く除痛を得るかが臨床的に重要な課題である。応募者の予備的な研究により、患者のBMIによりフェンタニルの投与量や除痛までの日数が異なること、経皮投与後のアベイラビリティーが肥満の影響を受けていることを示唆する結果を得た。しかしながら、今日の薬物動態の教科書には、皮膚代謝の重要性やその変動に関する記述がないのが現状である。本研究は、肥満モデルラットおよび本院の入院患者を対象とした臨床試験により、「経皮アベイラビリティーとその変動」という新たな概念を確立し、肥満の影響を考慮した迅速で安全な投与設計(増量法)により、オピオイド投与の有効性・安全性の確保と患者QOL の向上を目指すものである。さらに、本研究の知見の他の病態時の薬物療法の最適化への応用も視野に入れて研究を展開している。 平成27年度は、本院の入院患者を対象とした臨床試験「BMI値および体脂肪率によるフェンタニル経皮吸収製剤の薬物動態と鎮痛効果に及ぼす影響に関する検討」の症例組み込みを継続している。特に、尿中のコルチゾールの測定法について、測定条件最適化の検討を重ねている。また、免疫抑制剤のタクロリムスは、フェンタニルと同じく、CYP3A4の基質であり、TDM対象薬物であることから、本院入院患者を対象として、これまで定常状態における肥満度の体内動態変動に与える影響についてレトロスペクティブな検討してきたが、本年度は、特に臓器移植直後の静脈内投与から経口投与への切り替え時における投与量と血中濃度に着目してバイオアベイラビリティの変動に対する影響を検討したところ、定常状態とは一部異なる影響がみられることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
フェンタニルの臨床試験「BMI値および体脂肪率によるフェンタニル経皮吸収製剤の薬物動態と鎮痛効果に及ぼす影響に関する検討」の症例組み入れが継続的に進行中であり、タクロリムスについても併せて検討することで新たな展開も見られているため。
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今後の研究の推進方策 |
本院の入院患者を対象とした臨床試験の症例組み込みを継続する。さらに、フェンタニルが外来で導入される例についても検討を加える。尿中のコルチゾールの測定法について最適化し、実データの取得をすすめる。 フェンタニルと同様の代謝を受けるタクロリムスとシクロスポリンについても検討に加える。 肥満との関連が示唆される炎症性サイトカインの影響についても検討する。 皮膚の代謝酵素について、学外の新たな共同研究者の協力を得て研究を展開する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初、物品費1,000千円、旅費100千円、その他100千円との計画であったが、研究発表および情報収集のための旅費が余計にかかる見込みとなったため、消耗品の買い控えを行ったため、約90千円の次年度使用額となった。
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次年度使用額の使用計画 |
全額消耗品(実験用試薬)として使用予定である。
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