研究課題/領域番号 |
15K08092
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
崔 吉道 金沢大学, 附属病院, 教授 (40262589)
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研究分担者 |
嶋田 努 金沢大学, 附属病院, 准教授 (90409384)
菅 幸生 金沢大学, 薬学系, 准教授 (00467101)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 体内動態 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、肥満時の体内動態による医薬品副作用の回避戦略を確立することにある。これまでの予備的な検討により、経皮投与後のアベイラビリティーが肥満の影響を受ける可能性が示唆されているが、メカニズムの詳細は不明である。また、今日の薬物動態学の教科書には、皮膚代謝の重要性やその変動に関する記述がみられないことから、貼付製剤の薬物動態における「経皮アベイラビリティー」という概念を確立し有効な薬物投与設計への応用を目指している。 本年度は、フェンタニルの体内動態変動要因として炎症に着目し、アジュバント誘発関節炎モデルラット(AAラット)を用いてフェンタニルの体内動態への影響を検討した。 AAラットは、生理食塩水を投与したコントロールラットと比較して体重あたりの肝重量が有意に増加し、脂肪量は有意に減少した。また、肝臓のCYP3A1の遺伝子およびタンパク発現レベル、活性は有意に低下していた。両モデルラットにフェンタニルを静脈内投与後の体内動態を検討したところ、AUC∞、CLtotに有意差はなかった。また、代謝物であるノルフェンタニルの血中濃度に有意差はなかった。AA群の肝臓におけるCYP3A活性が低下したもののフェンタニルのAUC∞やCLtotおよびノルフェンタニルの血中濃度に有意差が認められなかったことは、フェンタニルが肝血流律速型薬剤であること、体重あたりの肝重量がコントロールと比較し大きくなっていることが要因と考えられた。またAAラットにおいて有意なVdssの低下が認められたが、このことは脂肪量の減少によるものと考えられた。 以上より、炎症はフェンタニル静注時の体内動態の個体差に与える寄与は小さいことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
フェンタニルの肥満による動態変動メカニズムについて炎症の影響を検討したが、フェンタニル静脈内投与後の体内動態変動に対する寄与は小さいことが示唆される結果となった。また、臨床試験の新規症例の組み入れが停滞しているが、学外共同研究者の協力により、ヒト皮膚におけるCYP3Aの発現の検討が進展したため。
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今後の研究の推進方策 |
臨床試験の新規症例の組み入れを進める。ヒト皮膚検体を用いた解析を進める。また、皮膚組織を用いたチャンバー実験を行う計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品の見積もり額の誤差により7,000円あまりの残額が生じたが、平成30年度の助成金と合算して消耗品として有効かつ適切に使用する。
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