研究課題
合成オピオイドのフェンタニルは、呼吸抑制等の重篤な副作用リスクを勘案しつつ、いかに早く除痛を得るかが臨床的に重要な課題である。本研究は、肥満時の体内動態変動による医薬品副作用の回避戦略を確立することにある。そこで、本研究は、肥満モデルラットおよび本院の入院患者を対象とした臨床試験により「経皮アベイラビリティーとその変動」という新たな概念を確立し、肥満の影響を考慮した迅速で安全な投与設計(増量法)により、オピオイド投与の有効性・安全性の確保と患者QOLの向上を目指して研究を行った。今年度は、フェンタニルの体内動態の個人差の要因として慢性炎症に着目し、アジュバント誘発関節炎モデルラット(AAラット)を用いてフェンタニルの経皮吸収に対する影響を検討した。AAラットは、体重減少、四肢の腫脹および肝臓の炎症性サイトカインmRNA発現レベルの上昇がみられたことから炎症モデルが作製できたと判断した。AAラットは、肝臓のCYP3A活性が有意に低下していたが、フェンタニル静脈内投与時のフェンタニルのAUC及びクリアランス、代謝比(ノルフェンタニル/フェンタニル)に有意差はなかった。この結果は、フェンタニルが血流律速型薬物であることと体重あたりの肝重量が対照群と比較し大きくなっていることが要因と考えられた。AAラットでは、皮膚での消失を免れた割合を示す皮膚アベイラビリティ―が低下傾向を示した。これらのことから、慢性炎症は皮膚の代謝能に若干の影響を及ぼすもののフェンタニル消失過程全体に与える影響は小さいものと考えられた。
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