研究課題
末梢オキシトシン濃度を測定した報告が相次いでいるが、侵襲性が高い血液検査が主流となっている。この方法は、子どもや感覚過敏を呈するASD 者へは実施困難なことも多い。この問題点の解決のため、当グループでは非侵襲性の唾液検査によるオキシトシン測定の妥当性と有用性を検証してきた。本研究は、唾液オキシトシン濃度を「社会性」を反映する簡便な生理指標として確立すべく、社会的行動により分泌されるオキシトシン濃度の変化量をもとに、社会性指標としての唾液オキシトシン濃度の妥当性と有用性を検証する。交際歴が3年未満の成人男女ペア12組に対して、(A)精神的接触課題(似顔絵描画や相手への感謝を述べあい愛情を確かめ合う)、(B)身体的接触課題(会話せず、相手を見ずに、マニュアルに沿って身体的接触のみの手のマッサージを行う)を遂行させ、その前後の唾液オキシトシン濃度の変化を、(C)コントロール課題である個別活動(各々が本を読んで過ごす)前後と比較検討した。課題の施行順は、被験者ペア間でカウンターバランスをした。唾液オキシトシン濃度は、口腔内に入れたサリベット・コットンに含ませた唾液を専用のキット (Oxytocin EIA kit ADI-901-153)を用いて測定した。被験者の血液ならびに唾液検体からオキシトシン濃度を従来のELISA法と、新規のLC-MS/MS法にて測定し、両者の感度を比較検討しているところである。定型発達者ならびに自閉スペクトラム症者を対象とした、唾液オキシトシン濃度と社会性を評価できる視線計測器Gazefinderのデータ値との比較検討を検証し、現在、論文投稿中である。自閉スペクトラム症者に対するオキシトシンによる治療的期待がもたれるなか、今までの研究報告をまとめた総説を執筆した。
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