リボフラビン(ビタミンB2)は糖、脂質、アミノ酸の代謝やミトコンドリアにおける電子伝達反応において重要な役割を果たし、細胞の機能維持に必須の化合物である。近年、研究代表者は哺乳類で初めてのリボフラビントランスポータRFVT1およびRFVT2の同定に成功した。また、RFVT2、RFVT3遺伝子多型とBrown-Vialetto-Van Laere syndrome (BVVLS)の関連も示唆する症例を報告した。そこで、臨床症例報告に基づいたRFVT遺伝子欠損における病態生理の解明を目的とし、ノックアウト(KO)マウスやin vitro実験系を用いた解析を行った。 既に樹立したRFVT3ノックアウトマウスの表現系の解析を実施した。出生時のRFVTノックアウトマウスの体重は野生型に比して有意に低値を示し、出生1~2日でほとんどが死亡することが判明した。また、RFVTノックアウトマウス新生児ではとBVVLSで幾つか報告されているアシルカルニチンの上昇が観察された。さらに、メタボローム解析や種々の検討の結果、脂肪酸代謝異常に加えて低血糖や一部のアミノ酸代謝異常が認められた。また、これらの現象は、母体へのリボフラビンの過剰投与により抑制された。 RFVTノックアウトマウス新生仔の血中および組織中(脳、腎臓、肝臓、心臓、肺)のリボフラビン濃度は野生型に比して著明に低下していた。妊娠16日目のヘテロノックアウトマウスに[3H]リボフラビンを投与したところ、RFVTノックアウトマウス胎児中の放射活性 は野生型胎児に比して有意に低値を示した。 以上より、RFVT3の欠損により、エネルギー源の代謝異常が確認され、これはリボフラビンの欠乏に起因することが明示された。RFVT3遺伝子多型とBVVLSの関係が示唆されており、BVVLS治療にリボフラビンが有用である可能性が示唆された。
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