研究課題
分子標的治療薬である血管内皮増殖因子受容体チロシンキナーゼ阻害薬(VEGFR-TKI)は主に腎癌治療に汎用されているが,高血圧や蛋白尿の高頻度な出現が使用制限因子として問題視されている。降圧薬のうち,アンジオテンシン II 受容体拮抗薬(ARB)は降圧効果だけでなく,副次的作用として血管新生阻害,抗酸化および腎保護能を有しており,理論上,VEGFR-TKI の抗腫瘍効果増強,副作用克服が期待される。このことを実証すべく,今年度は,腎癌をマウスに移植した担癌モデル動物を用い,スニチニブ(SU)とARBの併用投与を行った。具体的には,マウス腎癌細胞株であるRencaを用い担癌マウスを作製し、control群、担癌+Vehicle群、担癌+SU単独群、担癌+SU+ARB併用群の4群に割り付けた。25日間連日経口投与を行った後、生存率、腫瘍体積、血圧、蛋白尿などの評価を行った。その結果,生存率、腫瘍体積は、Vehicle群と比較してSU単独群とSU+ARB併用群は有意に延長もしくは縮小した。また、ARBを併用することで腫瘍体積はさらに縮小する傾向が観察された。血圧は、Vehicle群と比較するとSU単独群は有意に上昇、SU+ARB併用群は有意に低下した。蛋白尿は、有意な差は認められなかった。以上,本検討により、ARBを併用することで、SU単独と比べ同等以上の抗腫瘍効果が得られる傾向であり,SUの副作用であり効果の指標としても用いられる高血圧の是正による抗腫瘍効果の減弱はないことが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
担癌モデルの作製に当たり,当初,腎癌が生着しないなどのトラブルがあったが,癌細胞株の変更などにより解決した。その後は,薬物投与などもスムーズに進んだため,十分に満足のいく結果を残すことができたため,おおむね順調に進展していると感じている。
次年度は,未だ解決していない,抗がん薬と降圧薬の併用による抗腫瘍効果のメカニズムについて明らかにしたい。そのために,動物実験とともに細胞実験も行い,シグナル伝達物質やサイトカインなどの関連性について検討を進めたい。
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