研究課題
本研究では、肺炎球菌感染症に対する効果的な治療の探索を目的として、ムコイド株で認められているin vitro とin vivoでの抗菌薬の効果の乖離についてその要因を検討してきた。今年度は、その過程で明らかになった納豆由来のペプチドのムコイド株、非ムコイド株、薬剤耐性株にかかわらず肺炎球菌(と Bacillus subtilis を含む一部の Bacillus 属細菌)に特異的な抗菌作用のメカニズムについて、以下の成果が得られた。1. 肺炎球菌において、納豆由来ペプチド存在下での増殖曲線を作成したところ、ペプチドへの曝露初期(数時間以内)は通常の増殖を示し、その後急速な殺菌が観察された。一方で Bacillus subutilis では、ペプチド添加直後から速やかな生菌数の減少が認められた。2. 納豆由来ペプチドの殺菌作用時の細胞の形態観察を透過電子顕微鏡で行ったところ、本来双球菌である肺炎球菌が、納豆ペプチド曝露初期にはレンサ状になっており、菌体の分裂時に分離異常が起きていることが示唆された。さらに、B. subtilis では、形態観察からその殺菌機序は膜傷害であることが示唆された。3. 肺炎球菌の主要な自己溶菌酵素であるLytAの遺伝子欠損株では、殺菌時間が遅延することから、ペプチドの肺炎球菌への殺菌機序は、細胞分裂時の分離異常に伴って生じる溶菌であると考えられる。以上により、納豆ペプチドは非常に特異な狭域の抗菌スペクトルを有しており、その作用機序は肺炎球菌と B. subtilis で異なると考えられる。一方で、納豆ペプチドの抗菌活性とヘミンの関連など、まだまだ不明な点も多く、更なる研究の進展が必要である。
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AMB Express
巻: 7 ページ: 127
10.1186/s13568-017-0430-1