研究課題/領域番号 |
15K08107
|
研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
池田 圭吾 順天堂大学, 医学部, 准教授 (40465068)
|
研究分担者 |
関川 巖 順天堂大学, 医学部, 教授 (80179332)
佐藤 実 産業医科大学, 産業保健学部, 教授 (90162487)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 全身性エリテマトーデス / JAK阻害薬 / インターフェロン / T細胞 |
研究実績の概要 |
我々は、全身性エリテマトーデス(SLE)の疾患活動性にJAK/STATシグナルに関連したインターフェロン(IFN)関連遺伝子群の関与が重要であることを報告した。そこで関節リウマチの治療に使用されているJAK阻害薬を用いたSLEの治療について検討した。 SLEモデルマウスである(NZB/NZW) F1マウスを中心に、MRL/lprマウスも用いたJAK阻害薬の有効性の検証を行った。蛋白尿の減少や抗DNA抗体の低下を、また病理学的解析で糸球体腎炎や間質性腎炎の改善も認めた。特に腎臓病理においては、免疫染色による解析で改善が顕著であった。脾臓由来CD4陽性T細胞を中心とした免疫学的解析でも、JAK阻害薬もしくはJAK阻害薬とデキサメタゾンを併用した群で、effector/memoryCD4陽性T細胞を有意に抑制し、結果としてnaiveCD4陽性T細胞の増加が確認された。また活性化CD4陽性T細胞の抑制も認めた。腎臓由来のmRNA解析では、IL-6やIL-2など、SLEの病態の悪化に関与するサイトカインの発現の抑制がJAK阻害薬もしくはJAK阻害薬とデキサメタゾンを併用した群で認められた。I型IFN及びII型IFNも同様に抑制されたいたが、I型IFNの抑制が顕著であった。加えて、マウスの脾臓由来のCD4陽性 T細胞及びSLE患者の末梢血単核球由来のCD3陽性T細胞の遺伝子解析で、いずれもIFN-induced protein with tetratricopep- tide repeats 3 (IFIT3) の発現が、治療後に有意に減少していた。 以上から、SLEモデルマウスを用いた検証で、JAK阻害薬の有効性が示唆された。加えてマウス及びヒトに共通して、SLEの病態形成や疾患活動性の上昇にIFNが関与しており、特にI型IFNの影響が大きいことが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していたJAK阻害薬の臨床的な有効性をSLEモデルマウスで検証し、実証できたことに加え、作用機序の解析も行い、これまで行ってきたSLE患者検体を用いた研究結果に矛盾しない成果が得られたため。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでの成果を論文として発表する一方、以下の基礎的研究解析を行っていく。 ・当研究で同定されてきたインターフェロン関連遺伝子群において、疾患活動性や発症の予測因子となりうるか、SLEモデルマウスやSLE患者血液検体を用いて検証を行う。 ・プリステン等のアジュバント誘導自己免疫疾患モデルマウスにおいて、(NZB/NZW) F1マウス等と同様の研究を行い、同様の結果が得られるか検証を行う。 ・以上の検証を踏まえ、インターフェロン関連遺伝子のノックアウトマウス作製を行うかの検討を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
実験用消耗品が、一括購入で想定価格より安価になったため。
|
次年度使用額の使用計画 |
実験用消耗品に使用を計画。
|