研究課題/領域番号 |
15K08111
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研究機関 | 明治薬科大学 |
研究代表者 |
植沢 芳広 明治薬科大学, 薬学部, 准教授 (90322528)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | オピオイド / 緩和医療 / 副作用 / データベース / 化学構造 |
研究実績の概要 |
【目的】PMDAが公開している大規模副作用データベース(JADER)を用い、強オピオイドであるモルヒネ、オキシコドン、フェンタニルが共通に発現する副作用を精査することによって、臨床上重要な解析対象を抽出するとともに、患者背景情報および併用薬がオピオイドの副作用を、特に呼吸抑制発現リスクに与える影響を中心として評価した。 【方法】JADERに格納された患者情報、医薬品情報、および副作用情報を関連付けたデータテーブルを作成し、各強オピオイドの使用症例を抽出した。さらに、各併用薬との同時服用期間中に有害事象が発現している症例を抽出することによって、各オピオイドに対する副作用評価データテーブルを構築した。次に、副作用発現リスクに与える各種変動要因の影響の評価を目的として、患者情報および併用薬の使用状況より、副作用発現の有無に対する多重ロジスティック回帰分析を行った。 【結果・考察】各強オピオイドにはせん妄、悪心等の共通する副作用を認めた。これらのなかで重篤な結果を招く可能性が高い呼吸抑制に焦点を絞り、上記の検討を加えた。その結果、高齢はモルヒネおよびフェンタニルの呼吸抑制発現リスクを上昇させることが示された。一方、各強オピオイドに対して選択的に、呼吸抑制発現に対する独立した危険因子となる併用薬を認めた。本検討によって明らかとなった呼吸抑制に対する患者背景やオピオイドと併用薬の組合わせに関する知見は、オピオイドスイッチング等における薬剤選択の一助になるものと期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該研究では、オピオイドが関連する副作用・有害事象に対する併用薬の影響、患者背景の寄与、薬物の化学構造情報との関係を解析し、テーラーメード医療に貢献し得る患者毎の副作用発現予測モデルを構築することを目標としている。今年度は、臨床上重要な副作用に対して患者背景因子および併用薬物の影響を観察するために手法を確立した。この成果の公表もすでに決定していることから、本研究はおおむね順調に進展していると判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は併用薬等を説明変数として副作用発現に対するロジスティック回帰分析式を構築した。次年度は、昨年構築した医薬品の化学構造情報を付与した副作用データベースに基づいて、上記回帰式を拡張する予定である。すなわち、患者背景情報、種々併用薬の情報に化学構造情報を付与するとともに、機械学習法を適用することによってオピオイド関連副作用の予測モデルの構築を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は本格的なモデル構築と成果公表の準備段階に相当する種々の検討を行った。高度な計算に必要なハードウエア環境の構築を除外し、これらの検討項目に必要な計算環境のみに関する支出に用途を制限したため、次年度使用額が生じることとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、大規模なデータと機械学習を用いた定量的構造活性相関予測モデルの構築を予定しているため、化学構造および統計的および機械学習に関連した計算環境とともに、モデル構築に必要なハードウエア環境を構築する。さらに、成果発表を行うための支出を計上する予定である。
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