研究課題
【目的】モルヒネ、フェンタニル、オキシコドンといったオピオイドが惹起する臨床的に重要かつ発現機序が不明もしくは複数に渡る副作用に対して、医薬品の化学構造から得られる構造的・物理化学的特徴が及ぼす影響の解析および評価を目的として、PMDAが公開している大規模副作用データベース(JADER)を、化学構造情報を含む適切なデータ構造のデータセットに再構築した。さらに、主要な副作用と化学構造情報間の関連を解析する定量的構造毒性相関解析を実施し、副作用予測モデルの構築を目指した。【方法】昨年度構築したJADERの副作用症例-被疑薬-化学構造関連データベースを拡充した。さらに、本データセットを用い、オピオイドの投与によって生じる主要副作用である譫妄を解析対象として、JADER掲載の医薬品のオッズ比、正確検定P値を網羅的に算定した。これらの統計量から譫妄を誘発しやすい医薬品を選定するとともに、譫妄誘発医薬品とその他の医薬品を識別するために、決定木のアンサンブル学習法の一つであるランダムフォレスト法およびニューラルネットワークのアンサンブル学習法を用いて定量的構造活性相関識別モデルを構築した。【結果・考察】新規データセットを用い、各医薬品に対して物理化学的性質を含む5000種類余の化学構造情報を算定するとともに、オッズ比と正確検定のP値を紐付けた。JADERにおける報告数が一定件数以上、正確検定において有意、かつ正のオッズ比を有する医薬品を分類し、譫妄誘発医薬品として定義した。ランダムフォレストとアンサンブルニューラルネットワークを組み合わせた独自の手法により、譫妄誘発医薬品識別モデルを構築し、良好な予測モデルの構築に成功した(外部検証ROC_AUC:約0.9)。以上の成果は、緩和薬物治療における薬剤選択の一助になるものと期待される。
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