研究課題
小腸や腎臓、肝臓などの上皮細胞では様々な薬物トランスポーターが発現し、薬物体内動態の規定因子として重要な役割を果たしている。これまで、種々薬物トランスポーターの構造・機能解析が精力的に進められ、個々の薬物動態学的意義が明らかにされつつあるが、薬物の組織移行における薬物トランスポーターの関与と、その結果生じる毒性(副作用)発現との関係について系統的に解析した例はほとんど見当たらない。本研究では、薬物の毒性発現組織における薬物トランスポーターの発現を網羅的に解析し、さらに薬物の取り込みと毒性発現の関連について精査することによって、新たな副作用発現機構を解明するとともに、その防御法開発の基盤構築を目的とする。本年度は、パーキンソン病治療薬エンタカポンの体内動態に個体差が生じる要因を解明する目的で、生理学的薬物速度論解析の手法を用いてエンタカポンのヒトにおける体内動態を予測した。その結果、グルクロン酸抱合反応や消化管における排出トランスポーターの影響を考慮することで、ヒトにおけるエンタカポンの体内動態を予測しうることを示し、エンタカポンの体内動態におけるトランスポーターの重要性について明らかにした。さらに滋賀医科大学病院薬剤部、循環器内科との共同研究による抗凝固薬の臨床薬物動態と薬理ゲノミクスに関する臨床研究を進め、第Xa因子阻害薬アピキサバンの母集団薬物動態/薬力学解析を行い、アピキサバンの効果に影響を及ぼす病態を見いだすとともに、リバーロキサバンのトラフ血中濃度に影響を及ぼす薬物トランスポーターや薬物代謝酵素の遺伝子多型を明らかにし、体内動態の変動要因がアピキサバンとリバーロキサバンで異なることを明らかにした。
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British Journal of Clinical Pharmacology
巻: 84 ページ: 1301-1312
10.1111/bcp.13561