研究課題/領域番号 |
15K08115
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
長井 紀章 近畿大学, 薬学部, 講師 (90411579)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ナノ結晶製剤 / 口腔内崩壊錠 / NSAIDs / 消化管傷害 / 関節リウマチ / バイオアベイラビリティ / ビーズミル / 湿式破砕 |
研究実績の概要 |
食事の影響を受けず、安定した吸収性を有し、かつ投与量軽減により消化管障害の減弱を可能とする「次世代型NSAIDs 口腔内崩壊型ナノ結晶製剤」の開発を目指すべく、平成27年度はNSAIDsであるインドメタシン、イブプロフェン、ケトプロフェン及びメロキシカムナノ結晶の調製法の確立と口腔内崩壊錠の処方設計について検討した。
1)NSAIDsのナノ結晶調製法を確立する: インドメタシン、イブプロフェン、ケトプロフェン及びメロキシカムの4種のNSAIDsにおいて、界面活性剤(ソディウムドキュセート)、ベンザルコニウム塩化物、セルロース及びシクロデキストリンを添加剤として用い、ビーズミル法により乾式及び水中破砕を行うことで、安定な分散性及び粒子状態を有するナノ結晶分散液の調製方法を確立した(平均粒子径70-200 nm)。さらにこれらNSAIDsナノ結晶分散液は、溶液の状態と比較し分解性が低いことを明らかとした。 2)NSAIDsナノ結晶を含む口腔内崩壊錠を確立する: 上記で作成したナノ結晶製剤とアラビアゴム、ポリビニルピロリジノン、D-マンニトールを組み合わせた分散液を調製し、冷凍庫(-80℃)にて一日静置後、凍結乾燥機(EYELA FD-1000REC使用)にて凍結乾燥を行うことで口腔内崩壊錠の作成が可能となった。本処方で作成した口腔内崩壊錠は、第16改正日本薬局方製剤総則一般試験法記載の質量偏差試験、含量均一性試験、崩壊試験いずれにおいても適合であった。また、再分散後も良質なナノ結晶状態を維持することを確認した。
以上、NSAIDsを用いたナノ結晶口腔内崩壊錠の作成法を確立した。来年度は、今回作成したナノ結晶口腔内崩壊錠の小腸膜透過性や血中動態について評価する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
NSAIDsナノ結晶含有口腔内崩壊錠の調製法を確立した。これら口腔内崩壊錠は第16改正日本薬局方製剤総則一般試験法に適合して、口腔内崩壊錠を再分散させたときの粒子サイズもまたナノオーダーを維持していた。これにより来年度には、NSAIDsナノ結晶含有口腔内崩壊錠経口投与後の腸管膜吸収性やバイオアベイラビリティを把握することができると考える。また、NSAIDsナノ結晶含有口腔内崩壊錠経口投与による抗炎症効果の評価についても検討可能である。さらに、薬物投与量を変更させることによる副作用軽減効果の確認も容易に可能である。これら新規ナノ粒子含有経口投与製剤の確立及び評価結果は、これまでの経口製剤と比較し非常にユニークな特性を示すことが期待でき、本年度の研究が順調に進展していることを示している。
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今後の研究の推進方策 |
Wistarラットをイソフルラン麻酔後、今回作成したナノ粒子含有口腔内崩壊錠をラット小腸に直接注入し、経時的に腸管静脈から血液を採取し、腸管膜透過後のNSAIDs濃度の測定を行う。また、Wistarラットへこれらナノ粒子含有口腔内崩壊錠を経口投与し、頸静脈から血液を経時的に採取し、血中濃度変化を明らかとするとともに、ファーマコキネティクス解析を行う。これにより本年度作成したナノ粒子含有口腔内崩壊錠の薬物動態を詳細に評価する予定である。
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