研究課題
本研究は慢性骨髄性白血病におけるイマチニブ耐性機序の解明と治療薬の開発を目的としている。平成28年度では平成27年度における検討にて樹立したイマチニブ耐性細胞において、他のABLチロシンキナーゼ阻害薬に対して耐性を獲得しているか検討したところ、イマチニブ同様に耐性を獲得していることを明らかにした。また、平成27年度で得たCGHアレイの結果を基にイマチニブ耐性因子の同定を試み、関与する因子として受容体チロシンキナーゼであるMETの発現増加を認めた。このMETの阻害薬による耐性克服効果について検討したところ、完全にイマチニブ耐性を克服することを認め、さらにIn vivoにおいてもMET阻害薬をイマチニブに併用することにより完全に耐性を克服することを明らかにした。また、MET下流シグナル伝達因子についても検討を行い、extracellular signal regulated kinase 1/2(ERK1/2)及びc-Jun N-terminal kinase(JNK)が活性化することを認め、これらの阻害剤によって耐性を克服することを明らかにした。さらに現在、イマチニブ耐性に関与することが報告されているMDR1やBCRPなどの薬剤排泄トランスポーターの関与について検討したが、これらについては発現増加が認められたものの、その阻害により耐性克服効果は認められなかった。以上のことから、イマチニブ耐性にはMETの活性化が重要であり、この阻害によりイマチニブ耐性を克服することが可能であることが示唆された。今後は、CGHアレイの結果を基にMET以外の耐性因子について検討を進めていく予定である。
2: おおむね順調に進展している
平成28年度において、CGHアレイの解析を基にイマチニブ耐性因子の同定を試み、METの関与を明らかにした。さらに、MET阻害薬によりIn vitro及びIn vivoにおいて完全にイマチニブ耐性を克服することを明らかにした。これらのことから、研究計画通り、おおむね順調に進行していると考える。
平成29年度はイマチニブ耐性獲得機構の解明を引き続き進める。平成28年度において、イマチニブ耐性の因子としてMETを同定したが、CGHアレイの結果からは他の耐性候補因子の増減も認められる。そのため、METと同様に他の因子のイマチニブ耐性への関与及び詳細な作用機構を明らかにする。平成29年度における研究計画は、CGHアレイの結果を基に遺伝子発現の増減が認められた因子の耐性への関与について解析を進めていく。また、担癌マウスを用いた検討により、実際のIn vivoにおける耐性への関与についても検討する。これらにより成果が得られれば、順次、論文投稿や学会発表を行う。
平成28年度の研究計画では、必要な実験試薬及び実験動物の購入を行って検討を行った。しかし、計画を遂行する中で他の業務などにより検討が若干、進められなかったことが挙げられる。また、平成28年度での研究費を平成29年度に充て、平成29年度に精力的に研究計画を進めていく予定である。
平成29年度では、平成28年度及び平成29年度の研究費を抗体などの購入費に充てる。イマチニブ耐性機構を解明する上で、タンパク発現の解析等を行うことは重要である。また、In vivoにおける耐性克服効果についても検討を行う予定であるため、マウス購入に研究費を充て、研究課題を遂行する。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 謝辞記載あり 6件) 学会発表 (2件)
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