研究課題/領域番号 |
15K08117
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研究機関 | 摂南大学 |
研究代表者 |
河野 武幸 摂南大学, 薬学部, 教授 (50178224)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 臨床薬学 / 薬剤誘発性血管炎 / ダカルバジン |
研究実績の概要 |
申請者は,ダカルバジン(DTIC)の投与時に生じる血管痛を軽減できる投与方法の開発に関する研究を行っている.既に,申請者らはddY系マウスを用いて,血管痛を軽減できる医薬品をスクリーニングし,ザルトプロフェン(NSAIDs)やホモクロルシクリジン(抗ヒスタミン薬)が強い疼痛抑制効果を示すことを明らかとしている.平成28年度は,以下のような成果を得た.1)血管痛の原因となる5-diazoimidazole-4-carboxamide(Diazo-IC)の生成は,時間経過と共に増加するため,研究協力者らと共に,実臨床でDTIC調整時から投与までの時間と血管痛の関連性を調べた.その結果,血管痛が生じた投与時の準備時間は,42±23分であり,血管痛を生じなかった投与時の準備時間(20±8分)と比較して長時間であった.2)Diazo-ICの生成を抑制できる輸液について調べた.すなわち,DTICの調整に用いる輸液として,生理食塩液,大塚糖液5%,ソリタ-T3号輸液およびヴィーンF輸液を用い,継時的にDiazo-ICの生成量をHPLCを用いて測定した.その結果,ヴィーンF輸液を用いることで,Diazo-ICの生成量を最も抑制できることを明らかとした.これらのことを論文(YAKUGAKU ZASSHI 137(3)363-369(2017))で報告した. 本研究で得られた結果は,DTICの投与継続を可能とするために直接臨床に還元できる成果であり,臨床的意義は大きい.今後,1)ザルトプロフェンやホモクロルシクリジンで疼痛を抑制できるメカニズムに関する研究,2)Diazo-ICによる血管痛を抑制できる投与レジメンの構築に関する研究を行う予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度の研究計画は,おおむね順調に進んでいる.すなわち,研究実績の概要で記載したように,1)血管痛は,DTIC調製から投与にかかる時間に依存して生じること,2)DTIC調製に用いる輸液として,ヴィーンF輸液を用いることでDiazo-ICの生成を抑制できることを明らかとした.しかし,本課題申請時の研究計画に記載したDiazo-ICによる血管透過性の評価,すなわち,エバンスブルーを用いた色素漏出試験では,血管透過性を十分に評価できない可能性がある.従って,現在,新たな評価方法を検討中である.また,ザルトプロフェンやホモクロルシクリジンで疼痛を抑制できるメカニズムについても研究を進めており,実臨床に還元するための基礎的データを集積中である.
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は,本課題申請時の研究計画に記載した通り,血管透過性の評価,前処置方法(投与レジメン)の構築を行う予定である.また,現在までの進捗状況で記載したように,ザルトプロフェンやホモクロルシクリジンで疼痛を抑制できるメカニズムについても明らかとする予定である.このメカニズムに関する研究については,発痛および痛みの増強に関わるNOやprostacyclin(PGI2)について調べる予定である.すなわち,ザルトプロフェン,ジクロフェナクナトリウム,ホモクロルシクリジンおよびデキサメタゾンを前投薬したマウスにDTICを投与し,最も疼痛反応の強い時点で採血し,NOやPGI2の血中濃度を測定する.これにより,疼痛抑制効果の強かったザルトプロフェンやホモクロルシクリジンを投与した個体でNOやPGI2の生成が抑制されているか否かを調べる予定である.
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