研究課題/領域番号 |
15K08118
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研究機関 | 武庫川女子大学 |
研究代表者 |
岡村 昇 武庫川女子大学, 薬学部, 教授 (60379401)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 膵臓がん / PPARγ / troglitazone |
研究実績の概要 |
膵臓がんは、最も予後の悪いがんの一つとして知られている。その原因として早期発見が困難であること、化学療法が限られていることが考えられる。手術不能例ではゲムシタビンを中心とした化学療法が行われているが、その効果は十分ではなく、新規化学療法の探索が急務の課題である。そこで、腎臓がんで抗腫瘍効果を示したPPARγ刺激薬着目し、その抗腫瘍効果ならびにその機序の解明を目的として検討した。 膵臓がん細胞株Panc-1ならびにMIA Paca-2に対して濃度依存的な細胞増殖阻害効果を示したtroglitazoneを用い、その作用機序の検討を行った。PPARγ阻害薬(GW9662)共存下では、生存率の回復は認められなかった。また、troglitazone処置によりクロマチン凝集細胞の増加が認められたことから、PPARγ非依存的なアポトーシスの誘導が示唆された。さらに、MIA Paca-2細胞ではCaspase-3の活性上昇やBax/Bcl比の上昇が認められ、カスパーゼ依存的なアポトーシスが示唆された。 さらに詳細なシグナル伝達の寄与を検討したところ、MIA Paca-2細胞においては、JNK経路の関与が示唆された。また、膵臓がんの予後予測因子として知られているERCC 1の関与を検討したところ、いずれの細胞においても発現低下が認められ、何らかの関与が考えられた。 次いで、MIA Paca-2細胞をヌードマウスに移植し、troglitazone経口投与の影響を検討した。その結果、顕著な副作用や体重減少が認められない条件において、腫瘍容積の増加を有意に低下させることが明らかとなり、in vivoでも抗腫瘍効果を確認することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度では、PPARγ刺激薬であるtroglitazoneの作用機序の解明を行った。MIA Paca-2細胞においては、カスパーゼ依存的なアポトーシスの誘導を明らかにし、そこにJNK経路の関与を示すことができた。さらに、in vivoにおける抗腫瘍効果を示すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度では、drug repositioningの観点から、troglitazoneの抗腫瘍効果をさらに高める方法を探索する。すなわち、ERCC 1の低下が認められることから、ERCC 1が効果に関与するシスプラチン等の併用効果を検討することにより、膵臓がんの新たな治療法の開発に目指す予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
残金が少額のため、研究に必要な試薬等の購入ができなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度の交付額と合わせて、細胞培養用培地、各種シグナル伝達阻害薬等の購入に使用する。
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