膵臓がんは早期発見が困難であり、最も予後の悪いがんの一つとして知られている。また、膵臓がんに対する薬物療法は十分ではなく、新たな薬物療法の探索が急務の課題である。そこで、本課題では膵臓がんに対するPPARγ刺激薬の抗腫瘍効果を明らかにし、新たな膵臓がん治療法への応用を目的とした。前年度までにPPARγ刺激薬であるtroglitazoneの濃度依存的な抗腫瘍効果を明らかにした。その作用機序の一部は、JNK経路依存的なアポトーシスであった。また、担がんマウスを用いたin vivoにおける検討でも抗腫瘍効果を認めた。さらに、DNA修復酵素で膵臓がんの予後に影響することが知られているERCC1発現低下も認めた。 ERCC1は白金製剤の感受性に関わることが知られている。そこで今年度は、ERCC1の関与を詳細に検討する目的で、膵臓がんで汎用されているオキサリプラチンならびに同じ白金製剤であるシスプラチンとの併用効果について検討した。その結果、Combination Indexは、troglitazone 60 μMで0.63-0.65を示し、オキサリプラチンならびにシスプラチンと相乗効果が認められた。しかし、併用処置してもERCC1の発現量は変動せず、他の機序による相乗効果と考えられた。また併せてオートファジーの指標となるLC-3発現量を検討したところ、troglitazone単独で増加したが、併用処置ではさらなる増大は認められなかった。したがって、troglitazoneの細胞死の一部にオートファジーが関与すること、相乗効果には、ERCC1やオートファジー以外の機序が関与することが考えられた。
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