研究課題/領域番号 |
15K08120
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研究機関 | 兵庫医療大学 |
研究代表者 |
甲谷 繁 兵庫医療大学, 薬学部, 准教授 (00242529)
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研究分担者 |
宮部 豪人 兵庫医療大学, 薬学部, 教授 (10289035)
森山 雅弘 兵庫医療大学, 薬学部, 教授 (90601740)
川島 祥 兵庫医療大学, 薬学部, 助教 (60775724)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 光触媒 / 酸化チタン / メソポーラス材料 / 多孔性シリカゲル / 金属ナノ粒子 / 活性酸素 / 吸着 |
研究実績の概要 |
近年、抗がん剤による医療施設内および家庭内での被爆(汚染)が問題視されている。本研究では、その対策として抗がん剤に対して高い吸着能力を有し、かつ高い分解能力を併せ持つ可視光応答型光触媒の開発を進めている。 平成28年度までの報告では、抗がん剤などの有機物に対する高い吸着性を付与するために光触媒の基材として多孔性のシリカゲルまたはメソポーラスシリカをフッ素シリル化材で表面を疎水化し、さらに酸化チタン微粒子(TiO2)を担持させた複合材料(TiO2/F-SiO2)を作成した。そして、可視光応答性を持たせるために上記材料に金、銀、銅、白金などの金属ナノ粒子を担持させた複合材料(金属ナノ粒子/TiO2/F-SiO2)を開発した。 平成29年度は、金、銀、銅、白金を2種類混ぜた合金を担持することで白色のTiO2担持シリカゲルに様々な色を付けることができ、フルカラーの複合材料の作製に成功した。これらの光触媒材料からは、紫外光照射下で活性酸素の発生を確認することはできたが、490nm以上の長波長側に見られる金属ナノ粒子由来のプラズモン共鳴吸収帯を可視光励起しても活性酸素の発生は認められなかった。したがって、以前に観測された400 nm以上の可視光照射下で確認された活性酸素の発生は、金属ナノ粒子のプラズモン共鳴吸収由来ではなく、TiO2と金属ナノ粒子界面の電荷移動吸収に由来するものと推測した。一方、金属を担持していないTiO2/F-SiO2の場合、可視光下で大腸菌に対する強い殺菌効果を観測するという新しい知見を得ることができた。この殺菌効果は、ラジカル消去剤であるアスコルビン酸の共存下で大きく減弱することから、活性酸素発生の寄与が示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
フルカラーの金属ナノ粒子/TiO2/F-SiO2の複合材料の開発に成功し、TiO2/F-SiO2を使用することで大腸菌に対する強い殺菌効果を観測するという新しい知見を得ることができたが、実際の抗がん剤分解への適用を実証できていないので、研究は遅れていると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は、抗がん剤(シクロホスファミド、メトトレキサート、5-フルオロウラシルなど)を対象とする前段階試験として、抗がん剤と化学構造式がよく似ている無害な擬似抗がん剤の分解活性を調べる。擬似抗がん剤を使う理由は、本物の抗がん剤は強い毒性を有するため、安全性確保のために実験操作が煩雑になり、スピーディーな評価が行えないという問題点があるためである。擬似抗がん剤を使うことによって活性評価のスピードアップを図る予定である。この前段階評価によって、これまでに我々が開発した可視光応答型複合光触媒材料(金属ナノ粒子/TiO2/F-SiO2)の有効性を実証していく。なお、擬似抗がん剤には、メトトレキサートに対して葉酸、5-フルオロウラシルに対してウラシルを使用する。いずれも使用するランプ(光源)は、キセノンランプ等の強い光源から蛍光灯レベルの弱い光を照射するよう、ランプの種類を変えながら活性評価を検討する。最終的に汎用されている本物の抗がん剤を対象として、研究室内での予備的な分解実験を経て、病院薬剤部での実地試験を行い、実用化に向けての有効性を検証する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)少額なため、特に理由はなし。残額調整を行わなかったため。
(使用計画)消耗品等の物品費に充てる予定である。
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