ふらつきを及ぼす薬の多剤併用(ポリファーマシー)に伴う骨折リスクを推定するために、NDBJapanのレセプトデータを用いて、2018年度は(1)脆弱性骨折発症者を前年度に引き続き特定し、(2)ふらつきを及ぼす薬(中枢神経系用薬)ポリファーマシーに関連した、脆弱性骨折発症リスクを推定し、(3)中枢神経系用薬ポリファーマシーと受診医療機関数の関係性を解析した。 少なくとも13か月入院せずに生活したが骨折を発症した日本の高齢者(65歳以上)は、17か月で約120万人(約84万人/年)、そのうち脆弱性骨折発症者は約41%の約49万人(約35万人/年、男女比2:8)であった。脊椎圧迫骨折が、性、年齢階級(5歳刻み)を問わず圧倒的に多く、大腿骨頸部骨折は後期高齢層で急増した。大腿骨頸部骨折では、患者の約80%が入院治療を受け、その他の3部位(上腕骨近位端、橈骨遠位端、脊椎圧迫)では入院治療はわずか10%前後であった。 脆弱性骨折発症高齢者で麻薬非使用の約45万人を解析した結果、中枢神経系用薬の成分数増加とともに、脆弱性骨折発症リスクはほぼ直線的に増加した。5成分以上の中枢神経系用薬使用に伴う脆弱性骨折発症リスクは、非使用に比べ、少なくとも約2倍増加した。その傾向は、性別、年齢階級別などに層別しても、ポリファーマシーの指標を成分数から1日用量に着目した指標に変えても、ほぼ同様であった。 中枢神経系用薬成分数と受診医療機関数は弱いが相関しており、受診医療機関数が多くなるにつれて中枢神経系用薬の成分数は増加した。 中枢神経系用薬ポリファーマシーに伴う脆弱性骨折発症リスクの増加は、日本人高齢者において頑健であった。服薬情報の施設を超えた一元管理が必要とされる。
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