関節リウマチ(RA)関節内では、顕著な血管新生や血管透過性の亢進が認められる。RA関節炎の誘発には、炎症細胞が産生するサイトカインの他に、血管から滲出した血漿成分などの種々の因子も関与している。我々は関節滑液中に存在するリゾホスファチジン酸(LPA)がGタンパク質共役型受容体のLPA1を介してCOX-2の発現を一過性に増大させること、炎症性サイトカインのIL-1が誘発するCOX-2の誘導を相乗的に増大させることを明らかにしている。平成29年度では、LPAやIL-1が誘発する炎症応答に細胞外pHの酸性化が及ぼす影響を検討し、以下の事実を見出した。 ①酸性環境下、Gqが共役したプロトン感知性のOGR1を介して誘導されるCOX-2やADAMTS4の発現量は、LPAが共存すると相乗的に増大した。②生理的条件下において、LPAはGiあるいはG12/13が共役するLPA1を介してCOX-2やADAMTS4の発現を誘導するが、酸性環境下においてLPAは、GiあるいはG12/13が共役するLPA2を介してp38MAPKを活性化し、持続的にCOX-2の発現を誘導した。ADAMTS4発現の増大は、LPA2に共役したGiあるいはG12/13を介して活性化したp38MAPK、NFkBが関与していた。③酸性環境下でRA滑膜細胞を24時間培養すると、LPA2 mRNA量が増加したが、LPA1 mRNA量に変化は認められなかった。④軟骨細胞に発現するOGR1mRNA量は、RA滑膜細胞の発現量に比べ1/10程度と非常に低いが、IL-1共存下で培養すると発現量が約3倍に増加した。 以上の結果より、酸性環境下でLPAを共存させると、LPA→LPA2→Gi/G12/13と、H+→OGR1→Gqの二つの経路を介してH+が相乗的にCOX-2やADAMTS4の発現を誘導すると考えられる。
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