本研究は、これまでの糖尿病治療薬と異なった新しい作用機序をもつSGLT2阻害薬やDPP4阻害薬における副作用を対象とした薬剤疫学研究を実施し、市販後における新機序糖尿病治療薬の安全性について検討するものである。 まずはじめに、本邦の副作用自発報告データベース(JADER)を用いて、新規糖尿病治療薬を含む糖尿病治療薬の薬効群別の副作用を比較し、単剤では、これまでの糖尿病治療薬では、問題視されていた低血糖を起こしにくいと考えられていたDPP4阻害薬において、SU剤などの糖尿病治療薬との併用により低血糖を起こしやすいことが認められた。 そこで、新機序でかつ使用量も多いことからDPP4阻害薬に着目し、浜松医大の医療情報データを用い、DPP4阻害薬による急性膵炎の発症に他の糖尿病薬との併用が関連しているかどうかself-controlled case seriesデザインを用いて、検討を行った。その結果、DPP4阻害薬以外の糖尿病治療薬服用群をReferenceとしても、DPP4阻害薬単独または併用群に有意な関連は認めれなかった。 また、一大学の医療情報データベースのみでは、十分なサンプル数が得られていない可能性もあるため、最終年度には、さらに大規模なレセプトデータを活用することとし、DPP4阻害薬と高齢者に好発する尿路感染症との関連について検討したところ、DPP4阻害薬は、高齢者の尿路感染症と有意な関連があることが認められた。さらに、前立腺肥大症の既往がある男性では、そのリスクが高くなることが示唆された。
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