研究課題/領域番号 |
15K08126
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研究機関 | 独立行政法人国立病院機構本部(総合研究センター) |
研究代表者 |
今井 志乃ぶ 独立行政法人国立病院機構本部(総合研究センター), その他部局等, 研究員 (50608750)
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研究分担者 |
伏見 清秀 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (50270913)
堀口 裕正 独立行政法人国立病院機構本部(総合研究センター), その他部局等, 研究員 (50401104)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 後発医薬品 / 新薬へのスイッチ / スウェーデン |
研究実績の概要 |
急速な高齢化と高額な新医薬品の発売により医薬品費の増加が問題となっているが、欧米では後発医薬品(GE)使用推進で医薬品費抑制に一定の効果を得た。しかし、日本ではGE のある先発医薬品が全て切り替わっても医薬品費減少への貢献を疑問視する報告も見られる。本研究では、スイッチ現象に影響を与える要因(①同効新薬の発売、②同成分合剤の発売、③GE の発売、④患者臨床情報など)を検証する。検証には、全国規模の販売データを用いたマクロな時系列データを、また患者の診療情報が含まれる国立病院機構142 病院の大規模データベース(DB)を用いたミクロなコホートデータを用いる。 初年度である平成27年度には、降圧剤のデータを用いて、①同行新薬の発売、③GE発売によるスイッチの影響を検証し、論文の作成を行った。降圧剤のうち、ACEs(レニン-アンギオテンシン受容体阻害薬)とARBs(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬)の販売データ1000人当一日使用量(DDDs/1000 inhabitants and day)に換算し4半期ごとに、ARIMAモデリングで推計し、各時点の影響を評価した。結果、スウェーデンでは、後発医薬品への完全代替調剤を行っているため、①や③の影響は見られず、これらとは違う時点で、新たなEBMの発信があり、後発医薬品が存在する同種同効薬の他成分へ処方がスイッチする現象が見られた。日本では、スウェーデンのようなスイッチの現象は観察されなかった。これは、スイッチ現象が起きていないのではないと推測された。一般には降圧剤を使用している患者数が増加しているにもかかわらず、我々のデータでは、ほとんどのACEs、ARBsの使用状況が減少の傾向にあった。つまり、我々のデータに含めなかった合剤へのスイッチ現象が考えられた。今後は、②同成分合剤の発売に関する影響を検証する必要が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27 年度、平成28 年度の研究計画は、新薬へのスイッチ現象を全国規模の販売データを用いたマクロなデータで検証することであった。平成27 年度に、降圧剤(ACE 阻害薬、ARBs)、糖尿病治療薬、精神神経系薬剤、平成28 年度に、胃潰瘍薬(プロトンポンプインヒビター)、高脂血症薬(スタチン系)を対象に分析することを計画していたが、平成27年度は、降圧剤(ACE 阻害薬、ARBs)の分析に留まった。これは、研究計画の遅れではなく、統計処理の精査を行ったためで、平成28年度の処理を前倒したといえる。平成27年度の結果より合剤の入手が必須であると結論付けた。
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今後の研究の推進方策 |
今後も、研究計画に基づいて実施していく。平成27年度に確立した統計手法を用いて、糖尿病治療薬、精神神経系薬剤、胃潰瘍薬(プロトンポンプインヒビター)、高脂血症薬(スタチン系)を対象にスイッチ現象に影響を与える要因(①同効新薬の発売、②同成分合剤の発売、③GE の発売、④患者臨床情報など)を検証する。特に、合剤データの入手とそれに伴うデータクリーニングが優先される。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27 年度に、降圧剤(ACE 阻害薬、ARBs)、糖尿病治療薬、精神神経系薬剤、平成28 年度に、胃潰瘍薬(プロトンポンプインヒビター)、高脂血症薬(スタチン系)を対象に分析することを計画していたが、平成27年度は、降圧剤(ACE 阻害薬、ARBs)の分析に留まった。統計処理の精査を行ったためで、平成28年度の処理を前倒したといえる。そのため、一部の医薬品データの購入をせず、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度の研究結果より合剤の入手が必須であると結論付けた。したがって、平成28年度にそれらデータの購入を行う。
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