研究課題
神経幹細胞である放射状グリアから神経細胞への分化を促す因子としては、プロニューラル転写因子、Wntシグナルなど、アストロサイト分化を促す因子としては、JAK-STATシグナル、Notchシグナル、BMP(bone morphogenetic protein、骨形成タンパク質)シグナルなどが知られており、細胞の分化は細胞内因的な制御と細胞外環境の変化による制御により厳密に制御されている。上衣細胞への分化過程においても複数の様々な因子が関与していることが予想されるが、本研究においては下記に掲げる根拠により、BMPシグナル系が上衣細胞分化への関与を明らかにすることを目指す。すなはち、BMPシグナル系を抑制する転写因子Smad6、7によりin vitroで幹細胞が線毛を有した上衣細胞様の細胞に分化したとの報告があり、in vivoでもBMPシグナル系の抑制が放射状グリアからアストロサイトへの分化を抑制し上衣細胞への分化を促進している可能性がある。本研究ではBMPシグナル系の上衣細胞の分化への関与について明らかにする。まず、胎齢16日、生後0日、2日、8日、16日のマウスより側脳室の脳室帯を含んだ切片標本を作成した。上衣細胞の成熟の指標となるβTubulin-IV, S100β, Aquaporin4, GLUT1などを免疫組織染色により検出することができた。
2: おおむね順調に進展している
BMPシグナリング系の内因性の阻害因子であるNogginやBMPシグナリングが活性化しているかの指標となるリン酸化SMAD1/5/8の出生前後における上衣細胞での免疫組織化学による検出を行うために、標本作製や免疫組織化学の作業過程の最適化を図っている段階にある。
上衣細胞において、BMPや、BMPによる刺激を受けたBMP受容体によりリン酸化されて下流の遺伝子の発現を制御する転写因子であるSmad1、5、8、またSmad1、5、8のリン酸化を阻害することによりBMPシグナル系を抑制するSmad6、7、BMPに結合することによりその働きを阻害する内在性因子であるNogginなどBMPシグナル系に関連した因子の成熟過程にある上衣細胞における発現をこれらの因子に対する一次抗体と共焦点顕微鏡を用いた免疫組織学的手法により解析する予定である。
研究の進捗状況に若干の遅れがあるため、試薬等の購入が十分にできなかった。
研究の遅れを取り戻す努力を行い、必要な試薬の購入等を行っていきたい。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
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