研究課題
脳室壁を形成する上衣細胞は、脳-脳脊髄液関門として脳実質と脳脊髄液の境界の役割を果たしており、脳実質と脳脊髄液間の様々な物質の移動の調節に関与している。また上衣細胞の脳室側の表面より脳室腔に突出した線毛は、その運動により脳脊髄液の流動に寄与する。上衣細胞は胎生期の神経幹細胞である放射状グリアより派生し、周産期に線毛を有する成熟した細胞となるが、どのような分子メカニズムにより放射状グリアから産生され、成熟した細胞となるかについてはわかっていない。本研究は、BMPシグナル系や脳脊髄液の上衣細胞の分化への関与について明らかにすることを目的とした。平成28年度の免疫組織学的解析により、側脳室の脳室壁にてSmad1、5、8のリン酸化を阻害することによりBMPシグナル系を抑制するSMAD7が発現してBMPシグナル系を抑制している可能性が考えられた。平成29年度は、BMPシグナル系と上衣細胞への分化の関連についてさらに明らかにするために、上衣細胞の培養の実験系を確立した。先行研究にならい、生後0日のマウスの脳より放射状グリアを採取し、ウシ胎児血清を含んだ培養液で約1週間培養し、その後血清を含まない培養液で約2週間培養して、大半の細胞を上衣細胞に分化させることに成功した。今後、培養液にBMP2やBMP4を添加した場合にBMPシグナリング系が促進されて上衣細胞への分化が抑制されるか検証する予定である。また以前の実験で、血清を含んだ培養液で培養し続けると、アストロサイトに大半が分化することを確認している。その場合に、培養液にBMPシグナル系のアンタゴニストであるNogginを加えてBMPシグナル系が抑制されて上衣細胞への分化が誘導されるかを検証する予定である。また同様の実験方法を用いて脳脊髄液の上衣細胞の分化への関与についても解析を行う予定である。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件)
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