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2015 年度 実施状況報告書

内臓の筋膜と靱帯のメゾ解剖学的解析:鏡視下手術と画像診断への応用をめざして

研究課題

研究課題/領域番号 15K08129
研究機関東京医科歯科大学

研究代表者

秋田 恵一  東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (80231819)

研究分担者 奥田 逸子  国際医療福祉大学, 大学病院, 准教授 (40594213)
研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワード解剖学 / 外科 / 放射線 / 筋膜 / 靭帯
研究実績の概要

鏡視下手術時代の今は、人体構造をマクロ的に観察し、ミクロ的に構造の分布と広がりを解析する、メゾ(中間)レベルの解剖学が求められている。臨床医の求めるメゾレベルに含まれる構造のうち、内臓にみられる『筋膜』と『靱帯』について明らかにすることを目的とした。
本研究では以下の7つの課題について解析を進めている。1.手術時に食道後部に見られるという筋膜について。2.Treitz靱帯(十二指腸堤靱帯)の形態と付着について。3.Gerota筋膜(腎筋膜と同じとされることもある)の層構造について4.直腸後部のHiatal ligament(裂孔靱帯)の分布について。5.骨盤隔膜筋膜の広がりと本態について。6.いわゆる基靱帯の構造について。7.恥骨尿道靱帯、恥骨膀胱靱帯の構造と広がりについて。今年度は、主に膵臓周囲の筋膜の構造(2)ならびに直腸・肛門管の周囲の構造(4,5,6)についての解析を進めてきた。また、食道後部の筋膜について(1)は、その周囲構造との関係についてまとめられるところになってきた。
具体的な解析方法は、まず精細なマクロ解剖を行い写真にて記録した。次に、『筋膜』と『靱帯』の組織切片を作製し、Masson-Trichrome染色にて線維性結合組織を観察し、Elastica van Gieson染色にて弾性線維の有無を確認した。更に、比較的広い範囲の膜性構造と靱帯構造の広がりや付着部位を確認するために、Epoxy樹脂によるプラスティネーション標本を作製した。また、『筋膜』と『靱帯』の画像診断的可視化を目指し、解剖所見と画像所見の比較を行った。
これらの解析結果から、『筋膜』や『靱帯』と呼ばれている構造の組織学的性質とその空間的分布が明らかになりつつある。また、その周囲構造との関係についても範囲を広げて観察を進めている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

食道の後部の筋膜の構成については、これまでその存在は知られてはいたが、実態があまりわからないままであった。我々は、診断画像データからその本態について考えてみた。それにより、この膜は、特別にあらわれた膜であるというよりは、壁側胸膜の延びだしたものであることがわかってきた。これらについては、解剖体による確認もすることができた。しかし、膜については存在を確認するというだけでは研究として不十分である。そのため、3次元的配置や、胸管・リンパ管系についても明らかにするべく、3D立体画像を作製しているところである。これらの成果については、近く学会等で報告の予定である。
膵臓背側の構造についての研究の一部は、膵癌取り扱い規約の会議などで報告し、膵臓外科の疑問に対する答えとして活用することができた。これらを普遍的な一般化できる形での形態の理解を論文の形で示すことができるよう、研究を進めている。
他の領域の研究についても、同様に並行して進めており、当初の計画通りに研究が進展している。

今後の研究の推進方策

今後も、基本的に今年度と同様の研究手法用いる。次年度は、これまでの研究をさらに発展させるべく、手術等での問題・疑問の解決になるように、大学院生らとともに研究を進めていく予定である。
内臓にみられる『筋膜』と『靭帯』は、身体の中に多く見られる。これらは、単独で存在するわけではなく、周囲に血管や神経が走る。『筋膜』や『靱帯』の解析をおこなっているうち、周囲構造の解析も勧めなくてはいけないところがでてくる。我々は、広く応用可能な解剖学を目指し、特に対象を限定してということではなく、その周囲構造にも範囲を広げて研究を展開する予定である。
研究の進展に応じて、画像診断学的検討と臨床研究からのフィードバックの割合が増加する予定である。

  • 研究成果

    (21件)

すべて 2016 2015

すべて 雑誌論文 (10件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (8件) (うち招待講演 5件) 図書 (3件)

  • [雑誌論文] 肝臓の外科解剖2016

    • 著者名/発表者名
      伴大輔、秋田恵一、工藤篤、田邉稔
    • 雑誌名

      肝胆膵高難度外科手術アトラス

      巻: 70 ページ: 335-345

  • [雑誌論文] Mediastinoscopic subaortic and tracheobronchial lymph node dissection with a new cervico-hiatal crossover approach in thiel-embalmed cadavers.2015

    • 著者名/発表者名
      Tokairin Y, Nagai K, Fujiwara H, Ogo T, Okuda M, Nakajima Y, Kawada K, Miyawaki Y, Nasu H, Akita K, Kawano T.
    • 雑誌名

      Int Surg.

      巻: 100 ページ: 580-588

    • DOI

      10.9738/INTSURG-D-14.00305.1.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Magnetic Resonance-Thoracic Ductography (MRTD)によるリンパ管画像の進歩と診断への応用2015

    • 著者名/発表者名
      奥田逸子、秋田恵一、煎本正博、中島康雄
    • 雑誌名

      細胞

      巻: 47 ページ: 635-638

  • [雑誌論文] 骨盤底筋群を解剖から理解する2015

    • 著者名/発表者名
      山口久美子、秋田恵一
    • 雑誌名

      泌尿器ケア

      巻: 20 ページ: 1166-1173

  • [雑誌論文] 手術手技 肛門管近傍の解剖学的特徴から還元される腹腔鏡下ISR手技2015

    • 著者名/発表者名
      塚田祐一郎、伊藤雅昭、秋田恵一、齋藤典男
    • 雑誌名

      手術

      巻: 69 ページ: 1259-1266

  • [雑誌論文] 肛門管の解剖2015

    • 著者名/発表者名
      秋田恵一、室生暁、渡辺研太朗、那須久代、山口久美子
    • 雑誌名

      手術

      巻: 69 ページ: 1217-1223

  • [雑誌論文] 縦隔鏡を用いた食道癌根治手術を目指したThiel法固定献体での検討2015

    • 著者名/発表者名
      東海林裕、永井艦、藤原尚志、小郷泰一、奥田将史、齋藤賢将、秋田恵一、河野辰幸
    • 雑誌名

      日本内視鏡外科学会雑誌

      巻: 20 ページ: 155-160

  • [雑誌論文] 頸部食道癌における気縦隔を用いた上縦隔郭清の試み2015

    • 著者名/発表者名
      東海林裕、中島康晃、川田研郎、宮脇豊、岡田卓也、了徳寺大郎、藤原直人、齋藤賢将、藤原尚志、小郷泰一、奥田将史、中嶌雄高、久米雄一郎、松井俊大、永井艦、秋田恵一、河野辰幸
    • 雑誌名

      日本気管食道科学会会報

      巻: 66 ページ: 406-410

    • DOI

      10.2468/jbes.66.406

  • [雑誌論文] 女性後腹膜領域の筋膜層構造と傍大動脈リンパ節隔清への応用2015

    • 著者名/発表者名
      加藤友康、鈴木健人、山本良平、山口久美子、秋田恵一
    • 雑誌名

      産婦人科手術

      巻: 26 ページ: 65-70

  • [雑誌論文] 胆嚢の動脈と静脈2015

    • 著者名/発表者名
      秋田恵一
    • 雑誌名

      画像診断

      巻: 35 ページ: 627-635

  • [学会発表] 肛門管前方部の骨格筋と平滑筋の層構造の解析2016

    • 著者名/発表者名
      秋田恵一、中島康雄、山口久美子、那須久代、原田理代
    • 学会等名
      第121回日本解剖学会総会・全国学術集会
    • 発表場所
      ビッグパレットふくしま(福島県郡山市)
    • 年月日
      2016-03-28 – 2016-03-28
  • [学会発表] 肛門管周囲構造の臨床解剖2016

    • 著者名/発表者名
      秋田恵一
    • 学会等名
      第27回大腸肛門疾患懇話会
    • 発表場所
      ホテルグランヴィア京都(京都府京都市)
    • 年月日
      2016-03-05 – 2016-03-05
    • 招待講演
  • [学会発表] 膵頭十二指腸切除から見た膵鉤部周囲の解剖2015

    • 著者名/発表者名
      伴大輔、秋田恵一、山口久美子、二村昭元、那須久代、田邉稔
    • 学会等名
      第19回臨床解剖研究会
    • 発表場所
      東京大学(東京都文京区)
    • 年月日
      2015-11-14 – 2015-11-14
  • [学会発表] 骨盤底の解剖学:支持構造としての肛門挙筋と骨盤内臓2015

    • 著者名/発表者名
      秋田恵一
    • 学会等名
      第4回加齢画像研究会
    • 発表場所
      御茶ノ水ソラシティーカンファレンスセンター(東京都千代田区)
    • 年月日
      2015-10-17 – 2015-10-17
  • [学会発表] 繊細な骨盤内構造を考える2015

    • 著者名/発表者名
      秋田恵一
    • 学会等名
      第17回日本女性骨盤底学会
    • 発表場所
      京王プラザホテル(東京都新宿区)
    • 年月日
      2015-08-05 – 2015-08-05
    • 招待講演
  • [学会発表] 骨盤の進化そして老化:得たもの、失ったもの2015

    • 著者名/発表者名
      秋田恵一
    • 学会等名
      第54回東海肛門疾患懇談会
    • 発表場所
      名古屋マリオットアソシアホテル(愛知県名古屋市)
    • 年月日
      2015-07-25 – 2015-07-25
    • 招待講演
  • [学会発表] 解剖から見た腸間膜2015

    • 著者名/発表者名
      秋田恵一
    • 学会等名
      2015JCRミッドサマーセミナー
    • 発表場所
      神戸ポートピアホテル(兵庫県神戸市)
    • 年月日
      2015-07-19 – 2015-07-19
    • 招待講演
  • [学会発表] 腹膜-体壁間の構造を考える2015

    • 著者名/発表者名
      秋田恵一
    • 学会等名
      2015年度第1回腹腔鏡下子宮悪性腫瘍セミナー
    • 発表場所
      新百合ヶ丘総合病院(神奈川県川崎市)
    • 年月日
      2015-04-19 – 2015-04-19
    • 招待講演
  • [図書] グレイ解剖学 原著第3版2016

    • 著者名/発表者名
      塩田浩平、秋田恵一 (監修・監訳)
    • 総ページ数
      987
    • 出版者
      エルゼビア・ジャパン株式会社
  • [図書] グレイ解剖学アトラス 原著第2版2015

    • 著者名/発表者名
      塩田浩平、秋田恵一 (監修・監訳)
    • 総ページ数
      653
    • 出版者
      エルゼビア・ジャパン株式会社
  • [図書] 冠動脈化学塞栓療法(TACE)理論と実践ストラテジー2015

    • 著者名/発表者名
      衣袋健司、秋田恵一、松井修
    • 総ページ数
      252
    • 出版者
      医学書院

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公開日: 2017-01-06  

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