本研究では、昨年度まで行っていた研究を発展させ、1食道周囲に見られる筋膜ならびにリンパ系の解析、2膵臓に分布する神経の解析、3腎(Gerota)筋膜の層構造の解析、4肛門管周囲の靱帯構造の解析、5会陰筋群の解析などを中心に行い、まとめてきた。これらの研究は、鏡視下手術時代において、やはり多くの外科医等から疑問が寄せられており、より詳細で、それでいて臨床応用しやすい形での解答を求められる部分である。 1食道周囲の筋膜については、その剥離、切除範囲可能な範囲について検討し、その時にリンパ系の郭清を十分に行えるかについても検討し、論文発表を行った。2膵臓への神経分布については単に神経叢から分布するというだけではなく、上腸間膜動脈の走行との関係から、膵臓の浅いところ、深いところにどのように分布するかという空間的配置にも重点を置き、解析を行った。3腎筋膜については、腎の呼吸性移動時の動きと尿管の形態の変化に注目し、尿管結石が見られる部位との関係を画像診断学的に解析してまとめた。4、5肛門管周囲のとくに前方構造についての平滑筋の広がりや会陰小体の本態などについての解析をまとめ、論文として発表した。また骨格筋の隙間に入り込むようにして存在する平滑筋の構造についても明らかにしてきた。さらに会陰筋群の詳細な構造についてもさらなる解析を行うことができ、投稿準備中の状態である。 このように、解剖学的解析と組織学的解析を組み合わせ、それに画像診断用の画像による解析も行いながら、これまでのマクロ解剖学とミクロ解剖学の中間の領域であるメゾ解剖学の領域についての研究の発展に貢献し、臨床各科との協働作業を通して、研究成果の還元が行うことができた。
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