研究課題/領域番号 |
15K08130
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
長島 寛 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (40435665)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 発生 |
研究実績の概要 |
脊椎動物のからだは頭部と体幹に分けられ、それぞれが異なる機構で発生する。すなわち頭部の分節的構造は発生期の咽頭弓によってもたらされ、その間葉は神経堤細胞から、筋は分節構造を持たない頭部中胚葉から生じ、その筋を背根から出る鰓弓神経が支配している。一方、体幹の分節的構造は体節によって作られ、その間葉は中胚葉、筋は体節に由来し、その筋を腹根から出る脊髄神経が支配している。 それらの間にある頸部は、頭部と体幹、両方の特徴を示すことが知られている。つまりここでは、背側に体節からできた椎骨が分節的に並び、一見、体幹的様相を呈している。しかし頸部を特徴付ける鰓下筋群と僧帽筋群は頭部と体幹、両方の性質を持っているのである。 この頸部は進化の過程で長くなってきた。例えば、魚では胸鰭が鰓の直後にあり、頸部は極めて限られているが、両生類では頚椎1つ分、哺乳類では頚椎7つ分、ニワトリでは頚椎14個分ある。この頸部の拡大は、前肢が尾側へと位置を変えてきたためと考えられてきたがその機構は不明である。ニワトリの前肢は、10番体節より尾側の側板中胚葉に由来する。よって、吻側の9体節分は胚レベルで前肢の尾側への移動を示し、長い頸部の成立を表していると考えられる。 頸部の拡大機構を探るため、ニワトリの吻側の側板中胚葉の細胞系譜を解析した。その結果、頭部中胚葉に隣接する側板中胚葉から鎖骨が作られることが分かった。この領域の側板中胚葉は僧帽筋の原基を含み、発生期に咽頭弓を取り囲むように分布し、頭部中胚葉と交換可能であった。したがって、鎖骨の一部は頭部中胚葉的な細胞を含み、鎖骨も頭部/体幹境界に成立する構造だと考えられる。前肢芽および前肢の軟骨性骨格は鎖骨予定域のすぐ尾側から作られるから、胚における頸部とは鎖骨予定域と定義される。よって、進化過程における頸部の拡大は、鎖骨予定域の拡大によって行われたと推察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ニワトリ-ウズラキメラ法による吻側側板中胚葉の解析は、予定通りほぼ終了した。また吻側の側板中胚葉の分子的性質を調べるため、in situハイブリダイゼーションによって、頭部中胚葉特異的遺伝子の発現解析を行った。これらの結果は、論文としてほぼ受理された段階である。本年度は論文とりまとめに数ヶ月を要してしまったため、実験が遅れ気味である。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度に積み残した課題として、メダカを用いた細胞系譜解析を優先的に行う予定である。体節の他、側板中胚葉および神経堤細胞を標識し、こららの細胞の挙動を調べる。また、ヤツメウナギ胚を用いて、電子顕微鏡レベルで側板中胚葉の挙動を調べる予定である。
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