研究課題/領域番号 |
15K08135
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研究機関 | 島根大学 |
研究代表者 |
松本 暁洋 島根大学, 医学部, 助教 (70346378)
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研究分担者 |
大谷 浩 島根大学, 医学部, 教授 (20160533)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 発生・分化 / 脳・神経 / GM-CSF |
研究実績の概要 |
造血系サイトカインである顆粒球・マクロファージコロニー刺激因子 (granulocyte macrophage-colony stimulating factor; GM-CSF) について、神経系の細胞増殖・分化にも機能することがin vitroの研究で報告されているが、胎生期のin vivoの脳組織形成におけるGM-CSFの機能についてはまだ不明な点が多い。本研究は、当研究室で確立されたマウス胎仔組織内マイクロインジェクション法と子宮外発生法を組み合わせた発生工学的手法を駆使し、マウス胎仔脳におけるGM-CSF過剰発現系および機能抑制系を用いたin vivo実験系により組織形成におけるGM-CSFの機能を解明することを目的とする。 これまでに、マウス胎仔の大脳発生過程において神経上皮が活発に増殖する時期である胎齢13日から胎齢15日にかけての脳組織におけるGM-CSFおよびレセプターの発現を免疫組織化学的手法により確認した。 一方で、マウス胎仔組織内マイクロインジェクション法と子宮外発生法を組み合わせた発生工学的手法を用いて、GM-CSFを胎齢13日マウス胎仔大脳の側脳室に注入し、2日間発生を継続させ、組織学的な変化について解析を行ったところ、正常ではみられない組織形態学的な変化が観察された。組織形態学的変化が認められた部位について、増殖、分化に関連する分子について解析を行い、一定の傾向を認めた。 以上より、GM-CSFが脳の発生に関与しており、GM-CSFが発生中の脳に過剰量存在すると脳の組織形成に異常をきたすことが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウス胎仔のGM-CSF過剰発現系を作成し、脳の組織形態学的観察を行った。手法としては、神経上皮から脳の組織形成が進んでいく時期である胎齢13日マウス胎仔の側脳室内にrecombinant GM-CSFを注入し、母獣を閉腹・覚醒させ、子宮外発生法を用いて母体内で胎仔の発生を継続した(過剰発現系モデル)。Recombinant GM-CSF注入の2日後に胎仔を採材し、脳組織切片を作成し組織形態学的に解析を行った。結果、大脳の内側基底核隆起部分に細胞配列の不整な細胞群の形成など正常ではみられない組織学的な変化が観察された。この細胞群の正常を明らかにするために、神経幹細胞の増殖に関して5-bromo-2'-deoxyuridine (BrdU)投与後のDNA取り込み能の解析、Doublecortin (DCX; 細胞分裂を終えた神経前駆細胞および未分化なニューロンの微小管結合タンパク) 陽性細胞の発現分布について検討を行った。結果、GM-CSF投与群の大脳の内側基底核隆起部分にみられた不正な細胞群は、増殖能を欠いており、Doublecortin陽性であった。すなわち、神経上皮における神経幹細胞の増殖周期から離脱し、神経前駆細胞へと分化のスイッチをきった細胞群が移動できずに脳室表面側に蓄積されたものと考えられた。 したがって、GM-CSFが脳の発生に関与しており、GM-CSFが発生中の脳に過剰量存在すると脳の組織形成に異常をきたす知見が得られており、全体としておおむね順調に研究は進展している。
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今後の研究の推進方策 |
平成27および28年度に得られた結果を基にして、GM-CSF過剰発現系群および機能抑制系群と対照群の間で、大脳における神経幹細胞の増殖、細胞接着や細胞極性の変化、神経前駆細胞の移動について、異常所見が観察された内側基底核隆起を中心に、他の部位も含めて比較検討を行う。 神経幹細胞の増殖に関して、5-bromo-2'-deoxyuridine (BrdU) や5-ethynyl- 2'-deoxyuridine (EdU) を母獣腹腔内投与後2, 6, 10時間後にマウス胎仔を採材し、胎仔大脳組織切片における取込み細胞の分布をステレオロジー解析システム (Stereo Investigator;当研究室に現有) を用いて評価する。 一方、異常細胞群の性質についてより詳細に検討するため、Nestin、Doublecortin、NeuN陽性細胞の発現分布について検討を行う。その他、細胞極性の変化の解析のためγ-tubulinについて、細胞接着のうちタイトジャンクションに関与するZO-1の発現分布についても検討を行う予定である。 以上の実験結果から、GM-CSF投与による組織変化の機序について総合的に検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
マウス胎仔組織内マイクロインジェクション法と子宮外発生法を組み合わせたGM-CSF注入実験(GM-CSF過剰発現系モデル作成)および GM-CSF機能抑制系モデル作成実験は概ね予定通り行ったが、旅費を計上していたよりも少額しか使用しなかったため繰越額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
今年度は、引き続きGM-CSF過剰発現系モデルおよびGM-CSF機能抑制系モデルの作成及び解析を行う予定であり、それに必要な薬品、実験動物を購入予定である。
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