研究課題
造血系サイトカインである顆粒球・マクロファージコロニー刺激因子 (granulocyte macrophage-colony stimulating factor; GM-CSF) は、神経系の細胞増殖・分化にも機能することがin vitroの研究で報告されているが、胎生期のin vivoの脳組織形成におけるGM-CSFの機能についてはまだ不明な点が多い。本研究は、当研究室で確立されたマウス胎仔組織内マイクロインジェクション法と子宮外発生法を組み合わせた発生工学的手法を駆使し、マウス胎仔脳におけるGM-CSF過剰発現系を用いたin vivo実験系により組織形成におけるGM-CSFの機能を解明することを目的として行った。具体的な手法としては、GM-CSFを胎齢13日のマウス胎仔大脳の側脳室に注入し、2日間母体内での発生を継続させ、大脳の組織学的な変化について解析を行った。結果、胎齢15日胎仔の脳において正常ではみられない組織形態学的な変化が観察された。具体的には、大脳の内側基底核隆起部分において細胞配列不整な細胞群の形成が観察された。この細胞群の性状を明らかにするために免疫組織化学的解析を行ったところ、細胞の増殖に関しては5-bromo-2'-deoxyuridine投与後のDNA取り込み能が低下しており、細胞の分化についてはDoublecortin (細胞分裂を終えた神経前駆細胞に発現) 陽性であった。すなわち、神経上皮における神経幹細胞の増殖周期から離脱し、神経前駆細胞へと分化のスイッチをきった細胞群が移動できずに脳室表面側に蓄積されたものと考えられた。以上より、GM-CSFが脳の発生に関与しており、GM-CSFが発生中の脳に過剰量存在すると大脳の内側基底核隆起部分において組織形成に異常をきたすことが認められた。
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (6件)
Congenit Anom
巻: 58 ページ: 62-70
10.1111/cga.12241