本研究は、細胞極性に関わるaPKC遺伝子と細胞集団の極性制御に関わるWnt-PCPシグナルの構成因子Daam1遺伝子に着目した一連の実験生物学的検討である。一 連の解析により、1細胞を制御する極性シグナルと多細胞を制御する極性シグナルの関連性を明らかにする。 本研究では上皮細胞内でのaPKCとDaam1の相互作用によりリン酸化が変動する分子が、上流因子か下流因子か、2次性変動遺伝子かどうかを生化学的、細胞生物 学的、分子生物学的に検証している。上皮細胞での機能解析を目的として、遺伝子ノックアウト上皮細胞株の樹立を試み、aPKCとDaam1の相互作用が具体的な表 現形として得られるかを、実験技術も含めて検討した。 作製した細胞株を用いて、2次元、2.5次元、3次元の培養条件での細胞の挙動をLive cell imagingシステムを用いて経時観察して いる。また、経時観察と全く同様のタイムコース・同条件で培養したサンプルを用いて、細胞極性マーカー、細胞骨格、細胞内小器官、平面極性関連因子に対す る特異抗体で免疫蛍光染色し、共焦点顕微鏡を用いて観察している。 さらに、バイオ・インフォマティクス・データベースに蓄積されている情報と照らし合わせて、細胞極性病を定義する病態の探索と検証をリン酸化プロテオミクス解析において同定された遺伝子群との関連性を検討し、樹立した上皮細胞株を用いて生化学的、細胞生物学的な検討を行っている。 これらの一連の研究成果により、上皮細胞の極性を維持する分子メカニムが、1細胞内では共通であるが;、その下流の分子群の組成を代えることにより平面 極性をも制御することが明らかとなりつつある。
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