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2015 年度 実施状況報告書

メダカ突然変異体を用いた腸管閉鎖症発症機構の解析

研究課題

研究課題/領域番号 15K08139
研究機関京都府立医科大学

研究代表者

小林 大介  京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (60376548)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワード腸管閉鎖症 / ポジショナルクローニング
研究実績の概要

腸管閉鎖症は、先天的に腸の一部が閉鎖・狭窄する疾患である。本研究では、胚発生期に腸管閉鎖を示すメダカ突然変異体を用い、その遺伝的要因と、発症のメカニズムを明らかにすることを目的としている。
ポジショナルクローニングの結果予想されていた原因遺伝子の翻訳領域のシーケンスを行ったところ、C末端に近い部位でナンセンス変異(変異による終止コドン)が生じていた。本遺伝子が原因遺伝子がることを確認するために、この遺伝子’にCrispre/Cas9の系を用いて変異を導入した個体を作出し、掛け合わせによって変異体系統を樹立した。この系統はヘテロ個体の掛け合わせにおいて15-20%程度の胚で腸管閉鎖が観察された。この個体を原因遺伝子候補の野生型mRNAを用いてレスキュー実験を行ったところ有意に腸管閉鎖を生じる程度が低下した。このことから新規に作出した変異体の表現型は原因候補遺伝子の破壊に特異的であり、同定した遺伝子は、腸管閉鎖の原因となることを明らかにできた。
腸管閉鎖にいたるメカニズムを明らかにするために、腸管上皮並びに周囲の平滑筋細胞を酵素抗体法によって染色したところ、腸管閉鎖を起こしている部位以外では野生型胚との差は観察されなかった。従って腸管閉鎖の表現型には大きな細胞分化異常は関与していないことが示唆された。
腸管閉鎖の表現型がいつ生じるのかを明らかにするために、腸管とその前駆体である内胚葉に発現するfoxa2のプローブを用いてホールマウントin situハイブリダイゼーションを行い、腸管管腔形成期の観察を行った。その結果、腸管が一層の内胚葉のシートから管化を完了するタイミングのステージ26(受精後約2日の胚)で腸管の閉鎖が初めて観察されることが明らかとなった。
上記の研究成果について日本分子生物学会、日本解剖学会に於いて報告した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究の目的は、腸管閉鎖を示すメダカ突然変異体を用いて、どんな遺伝子の異常が、いつ、どこで、どのようにして腸管閉鎖を引き起こすのか、またその解析を通して腸管形成のメカニズムの一端を明らかにすることである。
当初の目標通り、ポジショナルクローニングによりこの変異体の原因遺伝子とその変異部位を同定することが出きた。この遺伝子の変異が真に腸管閉鎖の原因であるか否かについても新たなアリルの作出と、そのレスキュー実験により確認できた。
次に腸管閉鎖の表現型が観察されるのはいつからかを調べるために、発生時期を遡って観察を行った結果。腸管が一層の内胚葉のシートから管の形成を完了する受精後約2日の胚において初めて腸管の閉鎖が観察された。上記の解析により、変異体の原因遺伝子の同定、発症の時期について明らかにできた。
更に解析対象の変異体において、腸管上皮や平滑筋の分化にどのような影響があるかを免疫組織学的な手法を用いて解析した。その結果、腸管閉鎖を起こしている部位以外では野生型胚との差は観察されず、腸の形態形成に関する大きな細胞分化異常は起きていないものと考えられた。そこで腸管閉鎖の様子を観察するために、腸管上皮の細胞膜を蛍光タンパク質でラベルし、腸管閉鎖が起きている際にどのような形態変化が起こっているかについて解析を行った。腸管閉鎖が初めて観察されるステージにおいて、上皮細胞層の基底膜が分断され、細胞自体の形も本来の立方上皮が崩れていることが明らかとなった。

今後の研究の推進方策

ホールマウントin situハイブリダイゼーション法による発現解析の結果、この遺伝子産物がユビキタスな発現パターンを示したことから、この遺伝子の変異による異常が、腸管上皮の細胞そのものに直接影響を及ぼしているのか、また腸管上皮周囲の細胞の異常により上皮細胞に対するシグナルに異常が生じているのか、もしくはその両方なのか等については明らかではない。今後は組織特異的なレスキューや、コンディショナルナノックアウトの手法を用いて、腸管閉鎖の直接の原因となる組織を同定する予定である。
また腸管の管の形成が終了する時期に上皮細胞の形態変化が起こることが腸管閉鎖の原因と考えられるが、この表現型をより詳細に解析するために、組織特異的に蛍光タンパク質を発現する系統を作出し、ライブで腸管閉鎖の様子を観察し、その時何が起こっているのかを明らかにし、腸管閉鎖に至るメカニズムを明らかにしていく予定である。

次年度使用額が生じた理由

トランスジェニック系統作出のための方法を変更したことにより、より容易にトランスジェニック系統を作出することが期待できる。そのため初年度で計画していたトランスジェニック系統に加えて幾つかの新たな系統の作出を試みる予定であり、そのための費用として一部を繰り越した。

次年度使用額の使用計画

当初の計画に加えて、幾つかのトランスジェニック系統を新たに作出するために用いる予定である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2016 2015

すべて 学会発表 (2件)

  • [学会発表] Analysis of the medaka intestinal atresia mutant2016

    • 著者名/発表者名
      小林大介、木村哲晃、成瀬清、横山尚彦
    • 学会等名
      第121回日本解剖学会総会・全国学術集会
    • 発表場所
      ビッグパレットふくしま
    • 年月日
      2016-03-28 – 2016-03-30
  • [学会発表] Identification of the causal gene of intestinal atresia using medaka mutant2015

    • 著者名/発表者名
      Daisuke Kobayashi, Tetsuaki Kimura, Kiyoshi Naruse, Hiroyuki Takeda, Takahiko Yokoyama
    • 学会等名
      第 38日本分子生物学会年会 第88回日本生化学会大会 合同大会
    • 発表場所
      神戸ポートアイランド
    • 年月日
      2015-12-02 – 2015-12-04

URL: 

公開日: 2017-01-06  

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