リンパ管形成過程はがんの転移や炎症への関与など多くの病気の進展に深くかかわっている。本研究ではFoxO1転写因子の欠損がリンパ管形成にどのような影響を与えるかを、生後マウスの尾の真皮におけるリンパ管形成過程をモデルとして解析を行った。 これまでにTie2-CreERマウスを用いて内皮細胞特異的にFoxO1を欠損することにより、リンパ管内皮細胞の移動および増殖異常によるリンパ管網の形成異常を認めていた。しかしTie2-CreERマウスによるFoxO1欠失は血球系の細胞にも影響が及ぶ可能性がある。このことからリンパ管内皮細胞におけるFoxO1の機能が必要であることをより明確に示すため、内皮細胞に特異性の高いVE-cadherin CreERマウスを用いて同様の解析を行った。その結果、Tie2-CreERとほぼ同様のリンパ管形成の異常が観察されたことから、内皮細胞のFoxO1が尾の真皮リンパ管網形成過程に必要であることが示唆された。 またヒト皮膚リンパ管内皮細胞を用いてDNAアレイ解析を行い、FoxO1欠損により最も発現が低下する遺伝子としてCXCR4を見いだした。この細胞を用いてFoxO1の発現抑制を行うとCXCL12に対するmigrationの異常が生じ、これがCXCR4の発現低下によることを確認した。さらにFoxO1欠損マウスの尾の真皮のリンパ管網内皮細胞ではCXCR4の発現がみられないことも確認された。これらのことからFoxO1欠損によるリンパ管形成の異常の一端は、CXCR4の発現低下によりリンパ管内皮細胞の移動がうまくいかないことによるものと考えられた。 これらのことからFoxO1遺伝子とその下流の遺伝子がリンパ管形成過程に重要な寄与をしていることが明らかになった。
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