研究課題/領域番号 |
15K08147
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
北田 容章 東北大学, 医学系研究科, 准教授 (80324614)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 脊髄損傷 / 神経細胞新生 / 脊髄上衣細胞 / Xenopus / トランスジェニック |
研究実績の概要 |
本研究ではトランスジェニックXenopusを作成し、神経細胞を産み出す細胞として考えられる上衣細胞を時期特異的に遺伝子組換え後脊髄損傷を生じせしめ、細胞運命追跡と細胞死実験を行い、脊髄再生における新生神経細胞の機能を明らかとするものである。2系統(ドライバー・レポーター)の遺伝子をそれぞれ有数トランスジェニック動物を作成し、それらを掛け合わせることでこれを実現する動物を作出する必要がある。ところが、この動物における遺伝子発現が、想定されないものとなることが明らかとなった。すなわち、導入遺伝子の配置状況により、遺伝子組換えが生じない例が多々生じるため、例えば想定する神経細胞死に個体差や個々の神経細胞による差が生じる恐れが明らかとなった。この問題を解決する手法を確立することを目的とした遺伝子コンストラクト作成した。より具体的には、神経細胞特異的に誘導されるbeta-tubulinプロモーター制御下に3つのpolyAサイトをタンデムにつないだmKate2遺伝子を2つのloxPサイトで挟み、その直下にパルミトイル酸残基を付加したEGFP遺伝子を配置したコンストラクトを作成し、このコンストラクトの5'および3'末端にインスレータを組込み、それぞれの外側にISceIメガヌクレアーゼ制限酵素サイトを組込んだコンストラクトを作成した。この遺伝子を導入したトランスジェニック動物のmKate2発現を確認後、Digital PCRにて導入遺伝子のコピー数を確認し、更にこのF0動物を用いてFoxJ1およびSox2プロモーター制御下にERT2CreERT2遺伝子を発現するコンストラクトを導入するといった実験系を構築している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、ドライバー・レポーターの2種類の外来遺伝子を導入されたトランスジェニック動物を作成しそれらを掛け合わせるという、時期特異的な遺伝子組換え・遺伝子発現という技術が基盤となっているが、このトランスジェニック動物における時期特異的な遺伝子組換え・遺伝子発現について問題が生じることが明らかとなった。より具体的には、上衣細胞における時期特異的な遺伝子発現が想定した形で生じないことによる。これは導入遺伝子が同染色体に複数挿入された場合に、意図しない遺伝子組換えが生じるためと考えられ、導入遺伝子が1コピーであればこのような問題は生じないと考えられる。これは既存技術を組み合わせることで十分達成可能な技術的問題と認識しており、現在システム構築を急いでいる。
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今後の研究の推進方策 |
導入遺伝子を1コピーとするシステム構築を急いでいる。本研究ではドライバー・レポーターをそれぞれ含むトランスジェニック動物を作成し、それらを掛け合わせることで時期特異的な遺伝子組換えを可能とする動物を創出する。この場合、レポーター側の導入遺伝子のコピー数が問題となる。これを1コピーとするシステムとして、ISceIメガヌクレアーゼを用いた高効率トランスジェネシスに加え、Digital PCRによる導入遺伝子コピー数の確認を行うこととする。また、導入遺伝子の導入ゲノム領域周辺からの遺伝子発現への影響を最小限とするため、インスレータも導入する。これにより、導入遺伝子のコピー数が少なくなり導入先遺伝子座位からの影響が大きくなることを避ける。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究ではドライバー・レポーターをそれぞれ含むトランスジェニック動物を作成し、それらを掛け合わせることで時期特異的な遺伝子組換えを可能とする動物を創出することとなっているが、レポーター側の導入遺伝子が同一ゲノム内に複数挿入されることが問題で、想定した時期特異的な遺伝子組換え・遺伝子発現が期待できないことが判明した。トランスジェニック動物の作出について新たなシステム構築が必須となったことにより、トランスジェニック動物作成に要する分の使用額がについて遅延が生じたため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
導入遺伝子を1コピーとするシステム構築を行っている。必要となるコンストラクトは既に用意しており、トランスジェニック動物の作出と遺伝子発現の確認、導入遺伝子のゲノム内導入コピー数の確認を粛々と行っていく。選別された動物について、実体顕微鏡下での遺伝子発現確認にてF0動物を更に選別し、F1動物の作出と導入遺伝子のGermline transmissionと2番目の導入遺伝子の発現を行う。次年度使用額は、このトランスジェニック動物作出のために用いる。
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