研究課題
間質細胞あるいは線維芽細胞は各種臓器の実質細胞間を埋める構造として、また細胞外基質の産生細胞とされるが、臓器における特異的機能については不明な点が多い。消化管で考えるとペースメーカー機能を持つカハール介在細胞(ICC)が特異的な間質細胞として知られるが、他には粘膜上皮直下の筋線維芽細胞、粘膜固有層や粘膜下組織の線維芽細胞、筋層内の線維芽細胞、漿膜直下の線維芽細胞などが観察される。またこれら間質細胞は病態(消化管炎症など)において中心的な変化を示すことが知られている。本年は、各種遺伝子改変マウスの導入と増殖・解析および形態解析を進めるための抗体作製を行った。これまでにPDGF受容体α-EGFPマウス、c-Kit-copGFPマウス、KitL-GFPマウスやタモキシフェン誘導可能なCreERマウスとその解析のためのレポーターマウスmTmGを導入した。これらのマウスの増殖がすすみ今後の解析を進める準備が整った。これまでにKitL-GFPマウスの解析から、c-Kitリガンドを発現する細胞が少なくとも筋層線維芽細胞(PDGF受容体α発現細胞)であり、これらの細胞は受容体であるc-Kitを発現するICCの近傍(隣接)に位置することが形態学的解析から明らかとなった。消化管筋層に存在する2種類の間質細胞が隣接してリガンドと受容体を発現することが分かり、機能的な意味を示すと考える。間質細胞や平滑筋細胞に働くヘッジホッグシグナル解析のため転写因子Gli-1とGli-2の発現をlacZをマーカーとして可視化する遺伝子変異マウスを導入し、間質細胞との関連を解析し、一部の線維芽細胞とカハール介在細胞での発現を確認した。間質細胞発生とヘッジホッグシグナルとの関連について解析を進めることとしている。
2: おおむね順調に進展している
間質細胞や線維芽細胞を識別するためのレポーターマウスおよびCre-loxPシステム用のマウスが十分に利用可能まで増殖し、加えて免疫組織化学法による識別を可能とする各種抗体(c-Kit、PDGF受容体α、サイトグロビンなど)を用いた形態解析が進んでおり予定通りの進捗であると考える。加えてKitLマウス解析から線維芽細胞とカハール介在細胞の位置関係意味づけが可能となり、サイトグロビン発現細胞が間質細胞に特異的に発現することが明らかとなるなど結果が得られている。新たに解析を進めている転写因子Gliの発現が間質細胞とカハール介在細胞の一部で観察され、当該細胞の発生におけるヘッジホッグシグナルとの関連について解析の手がかりを得ることができた。
これまでに得られたデータであるKitLマウスの解析により線維芽細胞のカハール介在細胞支持機能が見いだされつつあること、サイトグロビン発現から線維芽細胞の網羅的解析を進めることができること、などから間質細胞の機能的解析が進められると考えている。またGli-1発現細胞の解析からも間質細胞の特異性が解析できる体制となった。当初の予定である遺伝的細胞系譜追跡法を線維芽細胞で行うための準備が整ったことを受けて、Cre-loxPシステムを実際に利用して同細胞の解析を進める。
動物解析のための動物購入飼育費用および人件費の使用が少なかった。また動物飼育費用の一部は次年度に払う必要があるため、繰り越しとした。
前年度の動物飼育費用に加え、多数の動物を飼育し解析するための動物購入飼育費と人件費、論文発表のための印刷費として使用する予定である。
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