HAP1がプロテアソーム阻害剤処理依存的に通常のSTB形態から顆粒網状構造に細胞内発現形態を変え、ミトコンドリア周囲に集積する様子が観察された。顕微鏡観察に加えて、サブセルラーフラクショネーションにおいてもHAP1タンパク質が細胞質分画からミトコンドリア分画に移動していることが示された。この事実をふまえ、ミトコンドリアからのチトクロムCリリースを解析した。GFP発現群(コントロール)では、プロテアソーム阻害剤処理時に細胞質チトクロムCが劇的に増加し、カスパーゼの活性化の引き金になっていると考えられた。一方で、GFP-HAP1発現群ではプロテアソーム阻害剤処理時の細胞質チトクロムCの量がGFPコントロール群と比較して明らかに抑制されていた。つまり、HAP1はプロテアソーム阻害剤処理時にミトコンドリア周囲に近接配置することによりチトクロムCリリースを抑制し、カスパーゼ活性化及びアポトーシスを抑制していると考えられた。チトクロムCはミトコンドリアポリンから細胞質へ放出されることから、HAP1とポリンのコア分子であるVDAC1の相互作用を免疫沈降で解析した。その結果、阻害剤処理依存的にHAP1はVDACと強く結合していることが明らかにされた。 ゲノム編集により作出したHap1ノックアウトマウスは出生直後の体重や脳の形態に顕著な変化が見出せなかったが、ほとんどが出生当日に死亡することが分かった。培養細胞を用いた実験からHAP1-nullのマウス脳ではプロテアソーム阻害剤依存的なアポトーシスが亢進していることが予想された。そこで出生当日に頚部皮下に阻害剤をインジェクションし、カスパーゼ3の活性化をウエスタンブロットにより定量した。その結果、野生型マウスと比較してHAP1-nullマウスではカスパーゼ3の活性化が顕著であることが分かった。
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