研究課題/領域番号 |
15K08167
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
村手 源英 国立研究開発法人理化学研究所, 佐甲細胞情報研究室, 研究員 (30311369)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 細胞膜 / 脂質二重層 / ホスファチジルセリン / ショウジョウバエ / 免疫電子顕微鏡法 / アポトーシス |
研究実績の概要 |
細胞を周囲から区切る境界である細胞膜は、様々な脂質種が一層に並び、それら2つがお互いに向き合ってできた脂質二重層にタンパク質を含んだ構造をしている。脂質二重層に注目した場合、外界に向いた外層と細胞内に向いた内層では構成する脂質の種類が異なっていることが知られている。この非対称分布は、外層の脂質は電気的に中性であり細胞外にある物質との不用意な相互作用を避けることができる反面、内層の脂質は細胞内にある様々な物質との相互作用を必要に応じて行なうことができるという形で、細胞膜の機能に重要な役割を果たしていると考えられている。ところが、ほとんどの細胞で外層と内層における脂質分布の非対称の程度は、曖昧なままである。その理由は、細胞膜だけを単離することが困難なだけでなく、二重層の各層を区別することがきわめて難しいためである。
そこで本研究では、免疫電子顕微鏡法を用いて細胞膜を構成する主要な脂質の分布を明らかにすること、およびそれらの相互関係についての解析に挑むことで、細胞膜の機能における脂質の役割を明らかにする事を目的としている。本年度は、ショウジョウバエの培養細胞の細胞膜内外層におけるホスファチジルエタノールセリン(PS)の分布について、脂質転移酵素の欠損変異体も利用して解析を行った。その結果、ヒトでは厳密に内層に限定して分布しており、アポトーシスを起こすなど細胞が通常の状態から逸脱した場合にはそのシグナルとして外層にも分布することが知られているPSが、ショウジョウバエでは通常の状態でも外層に分布していることが示された。このことから、ショウジョウバエの細胞では、アポトーシスを起こした細胞の認識機構がヒトなどの哺乳類とは異なっていることが推測された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
脂質分子の局在を解析するために使用してきた脂質結合プローブの一部が、当初の予測に反し、非特異的結合を多く生み出してしまった。そこで、プローブの反応条件を新たに検討し直しただけでなく、細胞を凍結する際やレプリカ膜を作成する際の条件を検討したところ、この問題を解決できることが明らかになった。それらを踏まえた新しい条件下で、局在解析を行なうこととなったため。
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今後の研究の推進方策 |
外層に移動した脂質を内層に戻すフリッパーゼの欠損変異体や、内外層の脂質分子を非特異的に両方向へ移動させるスクランブラーゼの欠損変異体を用いて、細胞膜におけるホスファチジルセリンの分布を調べる。これまでの研究から、スクランブラーゼの欠損変異体ではホスファチジルエタノールアミンの分布が、コントロールに比べて外層にやや多く分布していることが示されている。
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次年度使用額が生じた理由 |
前年度の未使用分が繰り越されたこと、すでに購入済であった試薬や器具を使用して実験ができたこと、当初の予測に反して研究の遅れが生じたため実験条件の再検討が必要になったことによる。
細胞培養用や免疫電顕用の試薬、プラスチック製品やガラス製品の購入にあてる計画をしている。
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