研究実績の概要 |
本年度はミクログリアのL型カルシウムチャネルの発現を抑制できるトランスジェニックマウス(Cav1.2 KDマウスと略)に対して昨年度と同様にMPTP投与によるパーキンソン病モデルを作製して解析した。MPTPの投与は黒質緻密部のドーパミン神経変性を引き起こすことが知られており、その神経変性の程度を機能的側面と形態学的側面の両面から検討した。まずCav1.2KDマウスにタモキシフェンを投与し、ミクログリアのCav1.2の発現抑制を誘導した。そして、MPTP投与前と後にロータロッド試験(6, 8, 10, 12rpm)を行い、ロッドから落ちるまでの時間を記録した。その結果Cav1.2KDマウスにおいては、特に10rpmにおいて野生型マウスと比較して顕著に落下潜時が短い傾向が認められた。行動学的試験終了後にマウスの脳を灌流固定し、黒質緻密部を含む領域の切片を作製した。そして、ドーパミン神経を特異的に染色する事の出来るチロシンヒドロキシラーゼ(THと略)に対する抗体を用いた免疫組織化学的染色を行い、残存するドーパミン神経の数を調べた。 その結果Cav1.2KDマウスでは野生型マウスよりも黒質緻密部のTH陽性神経の数が少ない傾向が認められた。この結果は作年度行ったCav2.2KDマウスの解析結果と全く逆の結果であり、ミクログリアにおけるCa2+情報伝達系はCa2+流入経路依存的に神経細胞死に対して異なった影響をもたらす可能性を示唆しており、大変興味深い。 さらに、本年度はミクログリア由来培養細胞MG6を用いた解析を開始した。MG6培養系にL型チャネルあるいはN型チャネルの阻害剤を添加した条件で、細胞をlipopolysaccharide + IFNgamma あるいはIL-4により刺激して、各種の活性化マーカーの発現を調べるという実験を現在進めている。
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