研究課題/領域番号 |
15K08175
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
大河内 善史 大阪大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (90435818)
|
研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | プロトンチャネル / 走化性 / 炎症 |
研究実績の概要 |
我々は、電位依存性プロトンチャネルが好中球において炎症を誘発する脱顆粒と走化性の抑制に関わることを明らかにしてきた。炎症抑制に関わる電位依存性プロトンチャネルの役割を解明するために、本年度は好中球の走化性を制御する機構を明らかにする目的で実験を行った。 好中球はfMLFで刺激されると走化性因子であるロイコトリエンB4(LTB4)を分泌する。これにより、周囲の好中球が集まるという性質を持っている。電位依存性プロトンチャネルが欠損した好中球の走化性が亢進している原因には、LTB4が過剰に分泌されている可能性が考えられた。そこで、LTB4受容体の阻害剤を用いて、プロトンチャネル欠損好中球の走化性が野生型と同程度の走化性を示すようになるか調べたが、変化は見られなかった。細胞外に分泌されるLTB4の量を調べたが、野生型とプロトンチャネル欠損好中球において、有意な差は見られなかった。また、プロトンチャネル欠損好中球が示す走化性の亢進は、細胞数を減らしても、観察された。すなわち、LTB4の関与ではないと考えられ、細胞自律的な異常によると考えられた。そこで、fMLFに対する感度が増加している可能性を検討した。低濃度のfMLFに対する走化性を調べた結果、プロトンチャネル欠損好中球は、野生型よりも低濃度のfMLFに対して走化性を示すことが分かった。すなわち、fMLFに対する感度が増加している可能性を支持した。 プロトンチャネル欠損好中球における脱顆粒の亢進は活性酸素を作るNADPHオキシダーゼの活性化に依存することから、走化性の亢進についてもオキシダーゼ活性が関与する可能性が考えられた。オキシダーゼを阻害する薬剤DPIで処理したプロトンチャネル欠損好中球は、野生型と同程度の走化性を示すことが分かった。すなわち、走化性の亢進は、オキシダーゼの活性化に伴う細胞内因子の変化によると考えられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
炎症抑制と関連するプロトンチャネルによる走化性制御機構の解明に向けて、進展があったのが理由である。オキシダーゼの活性化を抑制すると、プロトンチャネル欠損好中球で見られる走化性の亢進がなくなることは、今後の実験の方向性を決める重要な結果である。オキシダーゼの活性化は、カルシウムイオン濃度、活性酸素、pH、膜電位といったプロトンチャネルが制御する因子の変化を引き起こす。したがって、これらの要素が走化性の制御に関わる可能性を示す重要な結果である。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、オキシダーゼの活性化によって変化する細胞内因子、特に、プロトンチャネルが制御することが分かっている4つの因子「カルシウムイオン濃度、活性酸素、pH、膜電位」の機能に焦点をあてて、プロトンチャネルが制御する走化性機構を明らかにしていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究を進めていくうえで必要に応じて研究費を執行したが、当初の見込み額と執行額は異なった。
|
次年度使用額の使用計画 |
研究計画に変更はなく、前年度の研究費を含めて、当初の予定通り計画を進めていく。
|